Columnコラム

遺留分を渡さなくていい方法は?生前からできる遺留分対策について

遺留分とは、法定相続人が最低限受け取る権利として法律で保障されている相続財産の一部です。遺留分が問題になるのは、遺言などによって、相続の内容が法定相続分とは異なる不公平な内容に指定されているケースですので、これを巡って紛争が激化し、スムーズに話が進まないことも少なくありません。 

そのため、遺留分の支払義務を負う立場からすれば、紛争を回避できるような対策があるのならそれを行っておきたいところでしょう。本記事では、「遺留分を渡さなくても済む方法」があるのかという点について、生前からできる対策をふまえて解説します。 

遺留分を渡さなくていい方法は存在するのか?

結論から言えば、遺留分は法的に保証された権利であるため、遺留分の侵害が実際に生じているのであればその支払は行わなければなりません。そのため、「完全に渡さなくて済む方法」があるかというとそれは限られます、法律の枠組みを守りながら、財産を希望通りに分配するための対策を講じることは可能です。

生前から取り組める主な遺留分対策の方法は?

以下のような方法が、生前から取り組める遺留分対策として考えられます。 

⑴ 遺留分の放棄 

遺留分を渡さなくても済む確実な方法の一つが、相続人に事前に「遺留分放棄」の手続きをしてもらうことです(民法1049条)。遺留分の放棄が有効に行われれば、遺留分侵害額請求ができなくなります。 

もっとも、遺留分放棄は、放棄を行う相続人が自ら家庭裁判所に申立をし、許可を得た場合にのみ有効です。また、放棄する意思があるかどうかということのほかに、すでに一定の生前贈与を受けているかどうかといったことも遺留分の放棄を許可するかどうかの判断材料とされています。 

いずれにせよ、放棄してもらう相続人が協力的でない場合には、この手段を取るのは難しいと言えます。 

⑵ 相続人の廃除 

虐待や重大な侮辱などの著しい非行があった推定相続人については、被相続人となる人は、家庭裁判所に対して相続人の廃除を請求できます(民法892条)。廃除を認める旨の審判がなされたときには、推定相続人は遺留分を含めたすべての相続権を失うことになりますので、その結果、遺留分は支払わなくて済むということになります。 

なお、相続人の廃除については、遺言書に定めることもできます。 

⑶ 生前贈与 

生前贈与を行うと、遺産の総額が減少することになります。遺留分侵害額は遺産の総額をもとに計算がされますので、遺産額が減れば遺留分の額も減少することになります。 

また、遺留分侵害額を請求する人間が、過去に被相続人から生前贈与を受けていたことが明らかであるような場合には、遺留分侵害額のうちその生前贈与に相当する金額を前渡しされたものとして、支払額を抑えることができることがあります。 

 ⑷ 生命保険の利用 

生命保険金(死亡保険金)は、被保険者が亡くなった場合、受取人として指定されている者に支払われます。生命保険金は原則として遺産に含まれませんので、生命保険金の額は遺留分の計算から除かれますし、受け取らせたい相続人に直接渡すことができます。 

また、受け取った相続人においては、この保険金を遺留分侵害額の支払にあてることもできますので、これが紛争解決の手助けにもなるといえます。 

⑸ 養子縁組 

養子縁組をすると、相続人が増えることになります。 

遺留分は、遺産の額に法定相続分の2分の1の割合をかけた金額として定まりますので、養子縁組により子どもが増えると、子どもの法定相続分も小さくなりますので、それに応じて遺留分も減少することになります。 

もっとも、養子縁組は、縁組意思がなければ無効となりますので、例えば、あまりにも大勢の人と養子縁組をしているといった極端なケースでは、縁組意思の存在が疑われ、養子縁組が無効と判断される可能性があります。また、養子にも遺留分がありますので、万が一養子からも遺留分請求がされる事態になると、かえって遺留分義務者の負担が大きくなってしまう場合もありえます。 

なお、相続税申告においては、基礎控除の頭数として考慮できる養子の人数には制限がありますので、相続税対策も念頭に置いて養子縁組を行うような場合は注意が必要です。 

補足:家族信託の利用について

家族信託は、財産の管理・運用・分配方法を柔軟に設計できる仕組みです。一時期、家族信託を利用することで、信託譲渡した財産は遺産ではなくなり、遺留分の対象外とできるのではないかとの見解がありましたが、実務的には、信託された財産も遺留分の計算上考慮されるものとされています。 

遺留分対策として信託が利用できるのではないかと考えている方はご注意ください。 

まとめ遺留分対策は早めの準備がカギ 

遺留分を巡るトラブルを回避するためには、計画的な対策が重要です。本記事でご紹介した方法を参考に、生前からできる範囲での準備を進めましょう。 

相続や遺留分対策には、専門的な判断が伴いますので、必ず弁護士等の専門家に相談してください。 

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