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コラム

共有者が行方不明・認知症・連絡拒否「不在者財産管理人」等を活用した売却術

「実家を売却して介護費用に充てたい」「空き家になった共有物件を処分したい」 そう考えたとき、目の前に立ちはだかるのが「共有者全員の同意」という法律の壁です。

共有不動産の世界では、たとえ1%の持分しか持たない人であっても、その一人が欠けるだけで、不動産の活用や売却は完全に「フリーズ」してしまいます。

「兄がどこに住んでいるか分からず、連絡も取れない」 「共有者の一人が認知症になり、意思表示ができない」 「話し合いを求めても、一切無視され続けている」

こうした状況は、決して時間が解決してくれるものではありません。むしろ放置すればするほど、さらなる相続(数次相続)が発生して共有者がネズミ算式に増え、解決へのハードルは絶望的なまでに高まっていくのが現実です。

しかし、諦める必要はありません。20234月、民法に歴史的な大改正が行われました。 「所有者不明土地・建物管理制度」の新設や、共有物分割手続きの簡略化など、意思疎通ができない共有者がいても、法的に、かつスピーディーに解決するための強力な「武器」が用意されたのです。

本記事では、行方不明・認知症・連絡拒否といった「出口のない案件」を、法律の力でどう動かしていくのか。最新の解決術を具体的に解説します。

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なぜ「共有者が欠けると」売却できないのか?

持分1%でもNOと言えば、不動産は売れなくなる

「持分の過半数を持っているから、自分が主導権を握れるはずだ」――そう考えている方は多いのですが、不動産売却の実務はそれほど甘くありません。

法律(民法251条)には、共有物の「変更(処分)」には共有者全員の同意が必要であると定められています。ここでいう変更とは、建物を壊したり、第三者に売却したりすることです。 たとえあなたが持分の99%を所有していたとしても、残りの1%を持つ共有者が「行方不明」や「反対」という状態であれば、その不動産全体を売ることは法的に不可能です。買主の立場になれば分かりますが、所有者の一部が欠けているような、後からトラブルになるリスクを抱えた物件をわざわざ買う人などいないからです。

ちなみに、リフォームや賃貸契約の解除といった「管理行為」であれば持分の過半数で決めることができますが、「売却」という出口だけは、たった一人の不在で完全に塞がれてしまう。これが共有不動産の抱える最大のジレンマです。

放置が招く「負動産」の無限増殖

「今はまだ困っていないから」と問題を先送りにすることほど、恐ろしいことはありません。共有不動産は、時間が経つほどに「数次相続」という病に蝕まれていきます。

例えば、共有者の一人が亡くなれば、その持分はさらにその配偶者や子供たちに引き継がれます。これを数十年繰り返すとどうなるか。 当初は兄弟3人だけだった共有者が、気づけば会ったこともない「いとこの子供」や「疎遠な親族」など数十人に膨れ上がります。こうなると、全員の居所を突き止めてハンコをもらうのは、もはや個人の手に負えるレベルではありません。

資産価値があったはずの実家が、誰の手にも負えない、税金を払い続けるだけの「負動産」に変わる。そのカウントダウンは、共有者が一人でも欠けたその瞬間から、すでに始まっているのです。

<ケース1>共有者が「行方不明・音信不通」の場合

王道の解決策「不在者財産管理人」とは何か

「戸籍を辿っても現住所がわからない」「手紙を送っても宛先不明で戻ってくる」。そんな、生死は不明だが死亡届も出ていない共有者がいる場合、昔から使われてきた王道の手段が「不在者財産管理人」の選任です。

これは家庭裁判所に申し立てを行い、行方不明の本人に代わって財産を管理する「代理人(主に弁護士など)」を選んでもらう制度です。管理人は裁判所の許可を得た上で、本人に代わって不動産の売却に同意し、契約書にハンコをつくことができます。 一見、完璧な解決策に見えますが、実は一つ大きな難点があります。この制度は「その人の財産すべて」を管理対象にするため、売却が終わった後も、本人が現れるか亡くなるまで管理が続き、予納金などのコストがかさみやすいという側面があるのです。

最新実務の「本命」!所有者不明土地・建物管理制度

そこで、2023年の民法改正で登場した「切り札」が、所有者不明土地・建物管理制度です。 これまでの制度が「人」にフォーカスしていたのに対し、この新制度は「特定の不動産」だけにフォーカスします。

「行方不明のあの人の、この不動産の持分だけを管理してほしい」とピンポイントで裁判所に申し立てができるようになったのです。 この制度の最大のメリットは、不在者財産管理人に比べて手続きがコンパクトで、解決までのスピードが圧倒的に早いこと。不動産の売却という目的さえ果たせれば、その後の管理負担を引きずるリスクも低く抑えられます。「不動産さえ動かせればいい」という現代のニーズに合致した、まさに現場待望の「売却術」と言えるでしょう。

「行方不明者がいるから売れない」と諦めていた不動産でも、今の法律なら、その人の影を追い続けることなく、法的に切り離して売却を進めることが可能なのです。

<ケース2>共有者が「認知症・判断能力不足」の場合

「本人の代わり」にハンコを押せるのは誰か

共有者の一人が認知症などで判断能力を失っている場合、家族であっても勝手にその人の持分を売ることはできません。法律上、意思能力のない人が行った契約は無効だからです。 ここで避けて通れないのが「成年後見制度」の利用です。

家庭裁判所に申し立て、本人の権利を守る「後見人」を選任してもらう。この後見人が、本人に代わって売却の是非を判断し、契約のテーブルにつくことになります。 ただし、ここで誤解してはいけないのが、後見人はあくまで「本人の利益」のために動く存在だということです。「他の親族が困っているから」という理由だけでは、家裁も後見人も売却を認めてくれません。「売却代金が本人の入院費や介護施設代に充てられる」といった、本人にとっての必然性が厳しく問われることになります。

自宅(居住用不動産)を売る際の「もう一つの鍵」

もし売却したい実家が、認知症の共有者にとっての「自宅(かつて住んでいた場所を含む)」である場合、手続きのハードルはさらに一段上がります。 法律(民法859条の3)により、居住用不動産の処分には家庭裁判所の許可が別途必要になるからです。

「空き家だから早く売りたい」という親族側の理屈だけでは、なかなか許可は下りません。本人が戻る可能性はないのか、他に資産はないのか、売却価格は適正か……。裁判所の厳格なチェックが入るため、手続きには相応の時間と専門的な書類作成が求められます。

「利益相反」という落とし穴と特別代理人

また、実務でよくあるのが、兄弟の一人が「認知症の親の後見人」になっているケースです。 この状態で、兄弟と親が共有している実家を売ろうとすると、「利益相反(りえきそうはん)」という問題が発生します。「売る側(親の後見人)」と「売る側(兄弟本人)」が同一人物だと、親の利益が損なわれるリスクがあるからです。

この場合、その取引のためだけに「特別代理人」を選任してもらう必要が出てきます。「家族だけでなんとかしよう」と思えば思うほど、こうした法的な手続きの網に引っかかり、身動きが取れなくなるのが認知症案件の難しさです。

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<ケース3>共有者が「連絡拒否・非協力」の場合

話し合いを拒む相手には「裁判所」から通知を出す

「何度手紙を出しても無視される」「話し合いを求めても『俺は関係ない』と電話を切られる」。こうした相手に対して、これ以上感情的に訴えかけても時間の無駄です。 合意が取れない場合の最終手段が、「共有物分割請求」という訴訟手続きです。

これは「共有関係を解消したい」と裁判所に訴え出るもので、相手がどれだけ拒否していても、裁判手続きは淡々と進みます。最終的に下されるのは、裁判所による「判決」という強制的な命令です。 「相手の持分をこちらが適正価格で買い取る(代償分割)」か、あるいは「不動産全体を競売にかけて現金で分ける(換価分割)」か。裁判所が白黒つけてくれるため、相手の「無視」という戦術は、法廷の場では一切通用しなくなります。

改正民法の新兵器「持分取得・譲渡制度」

さらに、2023年の改正民法で、連絡が取れない、あるいは氏名すら定かでない共有者がいる場合に使える「持分取得・譲渡制度」という画期的な仕組みが加わりました。

これまでは、一人でも連絡がつかない人がいれば、不動産全体の売却は「詰み」でした。しかし新制度では、裁判所の許可を得ることで、以下のような「ショートカット」が可能になっています。

●持分取得

連絡不能な共有者の持分を、あなたが裁判所の定める価格で「強制的に買い取る」。

●持分譲渡

あなたの持分と一緒に、連絡不能な共有者の持分も「まとめて第三者に売却」する。

特筆すべきは、相手が「完全に不明」な場合だけでなく、「相当な調査を尽くしても氏名や所在が特定できない」場合にも使える点です。 「一人のせいで全員が身動きできない」という理不尽な膠着状態を、法的にこじ開けることができます。

実務上のフロー:どの制度をいつ使うべきか?

これまで解説してきた通り、共有不動産のトラブルは「相手がどんな状態か」によって、切るべきカードが全く異なります。解決への最短ルートを見極めるための判断基準を、表にまとめました。

【共有トラブル解決・比較表】

共有者の状況 活用すべき法的な手段 手続きのメリット・特徴
行方不明・音信不通 不在者財産管理人

所有者不明土地・建物管理制度

裁判所が選んだ管理人が契約を行う。

最新の「建物管理制度」ならスピード解決が可能。

認知症・意思能力なし 成年後見制度 後見人が本人に代わって売却を判断。

介護費用の捻出など「本人のため」という理由が必要。

連絡拒否・非協力 共有物分割請求(訴訟)

不明共有者の持分取得制度

相手のYESを待たず、裁判手続きで強制解消。

弁護士が介入することで「不動産の塩漬け」は解消できる

裁判所を通じた手続きは「書類の山」との戦い

ここまで紹介した制度は、どれも強力な解決策です。しかし、これらを使いこなすには、膨大な手間と専門知識が不可欠です。

例えば「行方不明」一人を証明するにも、古い戸籍を全国から取り寄せ、戸籍の附票を辿り、現地調査の結果を裁判所に報告しなければなりません。「認知症」であれば、本人の鑑定資料や詳細な収支計画が求められます。

こうした「立証の手間」に心が折れてしまい、結局不動産を放置してしまう方が少なくないのが実態です。

共有不動産は、放置するほど解決コストが上がる

「共有者の誰かがいない」という事実は、時間が経っても良くなることはありません。むしろ、次の相続が発生すれば、顔も見たことがない共有者がさらに増え、手続きの難易度は数倍、数十倍へと膨れ上がります。

共有不動産は、放置すること自体が最大のリスクです。

法改正によって、かつては「売却不能」と諦められていた物件にも、解決の光が差し込んでいます。まずはご自身が抱えている「共有の罠」を整理するために、専門家のリーガルチェックを受けることから始めてください。それが、塩漬けになった資産を家族の未来のために活用する、唯一の道なのです。

弁護士法人 丸の内ソレイユ法律事務所では、相続や不動産の問題について、初回60分の無料相談を実施しています。下記リンク先の問い合わせフォームから、お気軽にご相談ください。

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