「親から引き継いだ実家、とりあえず兄弟で共有にしておこう」 そんな、家族を思いやる当たり前の選択が、まさか数年後に「出口のない泥沼」に変わるなんて、誰が想像できたでしょうか。
いざ売却しようと思っても一人の反対で話が止まってしまったり、連絡すら取れない親族がいて途方に暮れたり。「身内だから最後はわかってくれるはず」という期待とは裏腹に、現実は固定資産税の請求だけが虚しく届き続ける……。こうした悩みは、今や決して珍しいことではありません。
正直なところ、共有不動産の問題は「時間が経てば解決する」どころか、放置するほど事態は悪化します。世代が変われば、会ったこともない親戚までが登場し、権利関係はネズミ算式に複雑になっていくからです。
でも、安心してください。実は、2023年4月に施行された改正民法によって、私たちの「武器」は格段に増えました。 行方不明の共有者がいても、話し合いに応じない相手がいても、法的に、そしてスピーディーに解決するための道筋(ロードマップ)が、今はしっかりと用意されています。
この記事では、相続不動産のねじれた権利を紐解き、あなたが一日も早くこの精神的な重荷から解放されるための「解決術」をお伝えします。
なぜ共有名義は放置してはいけないのか?

「今は何も困っていないから」と問題を先送りにするのが、共有名義において最も高くつく選択肢かもしれません。共有不動産は、いわば「時限爆弾」のようなもの。時間が経てば経つほど、あなたの意思とは関係のないところで、解決の難易度が跳ね上がっていくからです。
ここでは、なぜ「今」動かなければならないのか、放置することの恐ろしさを整理しておきます。
共有状態が引き起こす5つのリスク
特に兄弟で「半分ずつ」といった持ち方にしている場合、そのリスクは目に見えないところで膨らんでいきます。
●数次相続の発生
共有者の誰かが亡くなると、その子供たちに権利が細分化され、見知らぬ親戚が登場して収拾がつかなくなる。
●認知症によるフリーズ
共有者の一人が認知症などで判断能力を失えば、成年後見人を立てない限り、売却はおろか補修すらできなくなります。
●差し押さえの連鎖
他の共有者の借金や税金滞納により、その人の持分が差し押さえられ、全く関係のない第三者が共有者に加わるリスクもあります。
こうした「放置の代償」は、ある日突然、あなたの目の前に突きつけられます。具体的な5つのリスクについては、こちらの記事で警鐘を鳴らしています。
詳しくはこちら: 「兄弟で50:50」の共有名義はリスク大!相続不動産を共有にする5つのリスク
共有名義のデメリット(全員同意の壁)
法律には「共有物の変更には共有者全員の同意が必要」という、非常に厄介なルールがあります。これが、現場で私たちが「共有の罠」と呼ぶものです。
あなたが「古くなったからリフォームしたい」「空き家だから賃貸に出して有効活用したい」と思っても、他の誰か一人が首を縦に振らなければ、その計画は一歩も前に進みません。
自分の持ち分があるのに、自分の思うように使えない。それなのに固定資産税などの負担だけはしっかりやってくる。そんな不条理な状況から抜け出すために知っておくべきデメリットの総まとめは、以下のリンクから確認できます。
詳しくはこちら: 共有名義のデメリット総まとめ|売却・賃貸・リフォームは“全員同意”が必要?
ケース別:よくある「ねじれ・居座り」トラブルの解決法

共有不動産の問題がさらに拗れるのは、そこに「誰かが住んでいる」「土地と建物の持ち主が違う」といった個別の事情が絡んだときです。親族間だからこそ、「あいつだけ得をしている」「自分だけ損をしている」という不公平感は、一度火がつくと簡単には消えません。
ここでは、現場で特によく遭遇する2つの泥沼パターンとその出口について解説します。
土地は共有・建物は自分(または兄弟)だけの「ねじれ相続」
「親の土地に家を建てて住む」というのは、かつては美徳ともされた光景でした。しかし相続が発生し、土地だけが兄弟の共有、建物は住んでいる長男の単独名義……なんて状態になると、途端に「爆弾」へと変貌します。
この状態を放置すると、いざ家を建て替えようとした時に他の土地共有者から拒否され、計画が完全に「フリーズ」してしまいます。逆に土地だけを持っている側からすれば、自分の土地なのに活用も売却もできない「死んだ資産」を抱えることになります。
この「ねじれ」を解消するには、主に3つのルートがあります。
- 土地の持分をどちらかに集約する(買い取り)
- 土地と建物をセットにして第三者に売却する
- 適正な地代を支払うことで合意する
お互いが大損する前に、この複雑なパズルをどう解き明かすべきか。具体的な解決手順は以下の記事にまとめました。
詳しくはこちら: 親の土地に子の家が建っている「土地共有・建物単独」の複雑な相続を解決する方法
実家に居座る共有者に「家賃」を請求したい
「実家に住み着いている兄弟が、話し合いにも応じず、一銭も払わずに独占している」残された親族からすれば、これほど納得のいかない話はないでしょう。感情的には「今すぐ出て行ってほしい」と思うのが本音ですが、相手にも持分がある以上、無理やり追い出すのは法律上至難の業です。
しかし、諦める必要はありません。2023年の改正民法でも改めて整理されましたが、「自分の持分を超えてタダで使い続けること」は法的に許されません。
住んでいる人に対して、本来払うべき家賃の一部を「お金(不当利得返還請求)」として請求することは、あなたの正当な権利です。「出て行け」と言うと角が立ちますが、「使っている分のお金を払ってくれ」というアプローチは、解決に向けた強力な一手になります。
居座り問題を「お金」で解決するための戦略については、こちらの記事が参考になります。
詳しくはこちら:実家に居座る共有者に退去を求められるか?「家賃相当額」の請求(不当利得返還請求)
共有不動産を解消・現金化する3つの基本手法

「このまま持っていても仕方ない、早く現金化してスッキリしたい」そう考えたとき、出口戦略は大きく分けて3つしかありません。
どの道を選ぶかで、「手元に残る金額」と「解決までのスピード」が劇的に変わります。まずは、自分がどのパターンに当てはまるのか、冷静に天秤にかけてみることが大切です。
- 全員で協力して「不動産全体」を売る(一番高く売れるが、全員の同意が必要)
- 自分の「持分だけ」を第三者に売る(他の共有者に内緒で即現金化できるが、売却価格は安くなる)
- 共有者間で「持分を買い取る・買い取らせる」 (住み続けたい人がいる場合に有効。適正価格の合意がカギ)
正直なところ、共有者同士の仲が良ければ「1」がベストです。しかし、この記事を読んでいる方の多くは、それが難しいからこそ悩んでいるはず。
「1円でも多く残したい」のか、「1日でも早くこのストレスから解放されたい」のか。あなたの優先順位によって選ぶべき正解は異なります。
それぞれの具体的な進め方や、スピード感の違いについては、こちらの記事でさらに深掘りして解説しています。
詳しくはこちら: 共有不動産を早く現金化する3つの手法
手法①:共有者間で解決する(代償分割・持分譲渡)
「赤の他人に売りたくはない」「できれば身内で解決したい」という場合に、まず検討するのが共有者間での売買です。
あなたが相手の持分を買い取るか、逆に相手に買い取ってもらう手法(これを代償分割と呼びます)が最もポピュラーな解決策。ですが、実はここが一番「身内同士の感情」がむき出しになり、話がこじれやすいポイントでもあります。
「更地」か「底地」か?認識のズレが火種になる
親族間での話し合いが止まってしまう最大の原因は、実は感情だけでなく、「不動産の価値に対する認識のズレ」にあります。
売る側は「普通に売ればこの価格(更地価格)になるはずだ」と主張し、買う側は「共有持分なんだから、もっと安く(底地や持分価格)評価すべきだ」と反論する。この溝を埋めないまま交渉を続けると、「身内のくせにぼったくろうとしている」「自分を安く見積もっている」という不信感に繋がり、修復不可能な絶縁状態に陥ることも珍しくありません。
- 適正な価格をどうやって導き出すべきか?
- 親族間だからこそ、後で揉めないための書面はどう作るか?
こうした、現場での「落としどころ」の探り方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
詳しくはこちら: 「代償分割」で相手に持分を買い取らせる方法 ~適正な価格算出の考え方とトラブル回避のポイント~
手法②:自分の「持分」だけを第三者に売る
「もう一刻も早く、このギスギスした関係から抜け出したい」そう願う方にとって、もっとも即効性のある解決策が「自分の持分(権利)だけを売却する」という選択です。
驚かれるかもしれませんが、自分の持ち分を誰に売ろうが、他の共有者に許可を取る必要は一切ありません。これは法律で認められた正当な権利です。つまり、相手が「絶対売らない!」と意固地になっていても、あなたは自分一人の判断で不動産を現金化し、共有関係から文字通り「おさらば」できるのです。
ただし、この手法には知っておかなければならない「代償」があります。
- 最大のメリット:相手と一言も話さなくていい。最短数日で現金が手に入る。
- 最大のデメリット:売却価格が、市場価格の半分程度まで「安く買いたたかれる」リスクがある。
買い手となるのは主に共有持分を専門に扱う業者ですが、彼らも「他の共有者と揉めるリスク」を買い取るわけですから、提示される金額はどうしても低くなりがちです。中には、あなたの「早く逃げ出したい」という心理につけ込んで、不当に安い価格を提示してくる業者もいます。
「精神的な自由」を取るか、「適正な資産価値」を取るか。ハンコを押す前に、まずはそのリスクの正体をこちらの記事で確認しておいてください。
詳しくはこちら: 自分の「持分」だけを第三者に売ることは可能? メリットと安く買われるリスクを解説
手法③:相手が特殊な状況(行方不明・認知症・連絡拒否)の場合
共有不動産の問題がもっとも絶望的に感じられるのは、「話し合いたいのに、相手と意思疎通ができない」ときではないでしょうか。これまでは「全員同意」の原則に縛られ、一人が欠けるだけで不動産は完全にフリーズしていました。しかし、2023年の民法改正により、こうした「出口のない案件」を動かすための手段が誕生しています。
行方不明・音信不通の場合
「何年も連絡がつかない兄弟がいる」「どこに住んでいるか誰も知らない」 そんな場合でも、諦める必要はありません。最新の「所有者不明土地・建物管理制度」を使えば、裁判所が選任した管理人が不明者に代わって売却などの手続を行うことが可能です。相手が見つかるまで何十年も待つ必要は、もうありません。
共有者が認知症の場合
共有者の一人が認知症になり判断能力を失うと、売買契約のハンコが押せなくなります。この場合は「成年後見制度」を活用し、後見人が本人に代わって売却の判断をします。 特に「親の介護費用を捻出するために実家を売りたい」といった切実な事情がある場合、家庭裁判所の許可を得ることで、法的にクリーンな売却ルートを確保できます。
連絡を拒否し続ける場合
「居場所はわかっているのに、手紙も電話も完全に無視される」こうした悪質な連絡拒否に対して、改正民法は「持分取得・譲渡制度」という新兵器を用意しました。裁判所の手続を経ることで、無視を続ける相手の持分をあなたが強制的に買い取ったり、あなたの持分と一緒に第三者へまとめて売却したりすることが可能になったのです。
「相手が動かないから、もうどうしようもない」というのは過去の話です。今の法律であなたが手にできる具体的な「解決カード」については、こちらの記事で詳しく解説しています。
詳しくはこちら:共有者が行方不明・認知症・連絡拒否「不在者財産管理人」等を活用した売却術
手法④:【最終手段】共有物分割請求(裁判)で強制解決
「話し合いはもう限界。でも、このまま一生縛られるのは絶対に嫌だ」 そう確信したなら、法的に共有関係を強制終了させる「共有物分割請求」の出番です。
これは「共有状態を解消したい」と願う共有者に与えられた、法律上の強い権利です。相手がどれだけ「絶対に判は押さない」と拒絶していても、最終的には裁判所の判断で、物理的に分けるか、お金で解決するかの決着をつけることができます。
共有物分割請求の全手順
裁判というと、いきなり法廷で争うイメージがあるかもしれませんが、実際には段階を踏んで進みます。
まずは弁護士を介した最後の「協議(話し合い)」、それでもダメなら家庭裁判所での「調停」、最終的に決着がつかなければ「訴訟(裁判)」へと移行します。裁判まで行けば、良くも悪くも必ず「答え」が出ます。「いつ終わるかわからない」という出口のない不安からは、確実に解放されるのです。
訴訟までの具体的なスケジュールや、勝算を立てるための手順については、以下の記事で詳しくシミュレーションしています。
詳しくはこちら: 共有物分割請求とは?裁判で不動産の共有状態を強制解消する全手順
裁判で「競売」を命じられた際の対策
共有物分割訴訟の「最悪のシナリオ」としてよく語られるのが、裁判所から「競売(オークション)にかけて、その現金を分けなさい」と命じられるパターンです。
「競売になったら、相場の半値くらいまで買い叩かれるのでは?」と不安になる方も多いでしょう。確かに通常の競売にはそのリスクがありますが、共有物分割における「形式的競売」では、価格の下落を最小限に食い止めるための戦略的な立ち回りも存在します。
裁判所から競売を言い渡されても、パニックになる必要はありません。損をしないために知っておくべき知識と対策を、こちらにまとめました。
詳しくはこちら:共有物分割訴訟で「競売(形式的競売)」を命じられたら?価格下落を防ぐ対策
相手が非協力的な場合に弁護士ができること

「手紙を送っても無視される」「電話をしても怒鳴られて終わる」 共有不動産の問題が最悪な形でストップしてしまうのは、決まってこうした「相手の非協力」が壁になったときです。当事者同士で解決しようとすればするほど、過去の不満が噴き出したり、感情のぶつかり合いで事態が悪化したりして、最後には連絡すら取れなくなる……。
そんな膠着状態を打破できるのが、弁護士という存在です。
なぜ弁護士が入ると「話し合い」が動き出すのか
弁護士が介入する最大のメリットは、単に法律に詳しいことだけではありません。それは、家族・親族間の「感情のもつれ」というノイズをバッサリと切り離し、「純粋な法的解決の場」へステージを強制的に移せることにあります。
●感情のブロックを外す
弁護士は第三者として冷静に交渉を進めるため、相手方も「これ以上無視しても無駄だ」と察し、交渉の席に着く可能性が格段に上がります。
●「損得」の明確な提示
放置し続けることが相手にとってもいかに損(将来の負債リスクや、裁判になった際のデメリットなど)かを、法的な根拠と「数字」を持って説得します。
●「合意」の重みを変える
口約束ではなく、法的に有効な合意書を作成することで、後からの「言った・言わない」の蒸し返しを封じ込めます。
「自分一人ではもう一歩も進めない」と感じているなら、一度専門家の手を借りてみてください。弁護士が介入することで、昨日まで全く動かなかった話し合いがスムーズに進み始めるケースは多いのです。
その具体的な介入ステップや、解決への導き方については、こちらの記事で詳しくお伝えしています。
詳しくはこちら: 共有不動産が売れない原因は「共有者の非協力」 弁護士が介入して売却へ導く方法
共有不動産の解決は「丸の内ソレイユ法律事務所」へ

共有不動産の問題は、単なる「不動産の整理」ではありません。それは、これまでの家族の歴史や感情のしこりを解きほぐし、新しい一歩を踏み出すための「人生の再構築」でもあります。
「もう自分の力だけではどうにもならない」と感じたとき、一番やってはいけないのは、諦めて放置することです。あなたが今、勇気を持って向き合えば解決できる問題も、次の代に回してしまえば、子供や孫たちはさらに複雑な泥沼に巻き込まれることになります。問題を「今の代」で終わらせること。それこそが、あなたが次世代へ残せる、目に見えない最大の遺産ではないでしょうか。
「実家に居座る親族」「行方不明の共有者」「ねじれた土地権利」……。どんなに複雑に絡まった糸でも、必ず解きほぐす方法はあります。
まずは一度、あなたの胸の内にある不安をお聞かせください。丸の内ソレイユ法律事務所が、あなたの平穏な日常を取り戻すためのパートナーとして、最後まで共に歩みます。
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