相続が発生すると、遺産をどのように分けるかについて、相続人で話し合う必要が出てきます。この「分け方の話し合い」が 遺産分割協議 です。
ただ、遺産分割協議は「親族で話し合えば何とかなる」と思われがちな一方で、現実には次のようなところで止まりやすい手続でもあります。
- 誰が相続人なのか、全員が把握できていない
- どんな財産があるのか、資料が揃っていない
- 不動産の分け方で意見が割れている
- 感情が先に立ち、連絡を取るだけで負担になっている
ここでは、遺産分割協議の基本、全員合意が求められる理由、協議書の役割、話し合いが難しい場合の一般的な選択肢を整理します。
※なお、個別事情により取扱いは異なるため、具体的な見通しは状況に応じた検討が必要です。
遺産分割協議で決めること:3つの前提を揃える
遺産分割協議は、単に「誰がどれを取るか」を決める話ではなく、次の3つの前提を揃えながら進めることが多いです。
1)「誰が相続人か」(相続人の確定)
遺産分割協議は原則として相続人全員が関与する必要があるため、「誰が相続人か」の確定が出発点になります。
戸籍をたどると、想定していなかった相続人が判明することもあり、早い段階で確定しておくと後の手戻りを減らしやすくなります。
2)「何を分けるか」(遺産の範囲)
遺産分割は、分ける対象(遺産)が特定できて初めて具体化します。
預貯金・不動産・株式などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含めて整理することが一般的です。
3)「どう分けるか」(分割方法)
分割方法は一つではありません。現金は割りやすい一方、不動産は分け方(売却・代償分割・共有など)を検討する必要が出やすく、評価の前提も揃える必要があります。
なぜ相続人全員の合意が必要なのか
遺産分割協議は、原則として 相続人全員の合意 が求められます。これは、遺産の帰属(誰が取得するか)を決める重要な合意であり、相続人の一部が欠けた状態で進めると、後から「同意していない」「自分を除外している」といったクレームを生み、問題が生じやすいためです。
一部の相続人だけで決めた場合に起きやすいこと
- 後から相続人が判明し、協議をやり直す必要が出てくる場合がある
- 不動産の名義変更や預貯金の手続が、途中で止まることがある
- 「話し合いに参加できていない」という不信感を生み、その後の相続人間の調整が難しくなることがある
だからこそ、遺産分割協議では、「全員が参加できる前提づくり(相続人の確定・連絡方法の調整)」が、実務上の重要ポイントになります。
「協議」といっても、全員が集まる必要はある?
遺産分割協議と聞くと、相続人全員が一堂に会して話し合う場面を想像されることがあります。
しかし実際には、距離や関係性の問題で一度に集まれないことも多く、次のような進め方が取られることがあります。
- 書面やメール等で、分割案や根拠資料を共有して意見を整理する
- 代表者(または代理人)を窓口にして、連絡を一本化する
- 論点ごとに合意できる部分を先に固め、争点を整理する
「直接会って話すこと」自体が負担になっている場合、連絡方法を変えるだけでも、話し合いが前に進みやすくなることがあります。
遺産分割協議書とは?役割と注意点
遺産分割協議で合意できたら、合意内容を文書化した 遺産分割協議書 を作成するのが一般的です。協議書は、主に次の目的で用いられます。
- 不動産の名義変更(相続登記)
- 預貯金の解約・払戻し
- 各種名義変更手続(証券口座など)
- 合意内容の明確化(後日の行き違いを減らす)
署名・押印前に確認したいポイント(チェックリスト)
遺産分割協議書に署名・押印した後は、修正が容易でない場面もあり得るため、一般的に次の点を確認することが大切です。
- 相続人が全員そろっているか(漏れがないか)
- 遺産の範囲が適切か(対象の漏れ、財産の特定ミスがないか)
- 不動産の表示が正確か(登記簿どおりに記載されているか)
- 預貯金の口座が特定できているか(金融機関名、支店名、口座番号等)
- 誰が何を取得するかが明確か(曖昧な表現がないか)
- 後から財産が出た場合の扱い(清算条項の定め方等)
- 実行の段取り(登記、払戻し等を誰が行うか)
遺言書がある場合との関係
遺言書がある場合、遺産分割協議との関係は、遺言書の内容によって変わります。遺言書の内容が具体的であれば、遺言書に従って手続を進めることが想定されますが、一方で「遺言書だけでは手続ができない」「解釈や手続で調整が必要」といった場面もあり得ます。
また、遺言書や生前贈与があると、遺留分など別の論点が出てくることもあるため、全体像を整理することが重要です(結論は事案により異なります)。
話し合いが難しいときの次の選択肢(調停など)
協議で合意できない場合、家庭裁判所の 遺産分割調停 を検討することがあります。調停は、当事者同士だけの交渉に比べて、資料や争点を整理しながら話し合いを進められる場合があります。
もっとも、調停が適するかどうか、どの資料を準備すべきかなどは、事情によって異なります。早い段階で、「相続人・財産・評価・感情面のどこで止まっているのか」を整理しておくと、次の手が選びやすくなります。
まとめ:協議は「全員合意」と「前提整理」がポイント
遺産分割協議は、相続人全員の合意が原則となるため、相続人の確定・財産の把握・争点整理が欠かせません。
「話し合いが進まない」と感じる場合でも、止まっている理由を分解して整理すると、前に進む糸口が見つかることがあります。
当事務所では、相続に関するご相談は初回60分まで無料です。状況整理だけでも構いませんので、お気軽にご相談ください(具体的な見通しは個別事情により異なります)。
遺産分割協議は、「何を、誰と、どう決めるか」を押さえるだけでも、話し合いの進め方を整理しやすくなります。
手続や話し合いの中で迷いやすい点を、Q&Aで整理します。
よくあるご質問(FAQ)
Q. 遺産分割協議は、相続人の一部だけで進められますか?
一般に、遺産分割協議は相続人全員の関与(合意)が求められるため、一部の相続人だけで合意書を作ると手続が止まる場合があります。まずは、相続人の確定と、相続人が全員参加しているかどうかの状況の整理が重要です。
Q. 遺産分割協議書は必ず作成した方がよいですか?
協議がまとまった場合でも、預貯金の解約や不動産の名義変更などで遺産分割協議書の提出を求められることがあるため、作成することが多いです。必要性は、財産の内容や手続先によって異なります。
Q. 話し合いがまとまらない場合、次にどんな選択肢がありますか?
当事者間の協議が難しい場合、第三者を介した整理や、家庭裁判所での遺産分割調停などの手続を検討することがあります。どの選択肢が適するかは、事情によって異なります。
Q. 遺言書がある場合でも協議が必要になることはありますか?
遺言書の内容や財産の状況によっては、名義変更等の手続の問題、遺留分の問題、遺言書で触れられていない財産の扱いなどで協議が必要になることがあります。
協議書の要否や、相続人全員の合意が必要になる範囲など、まずは「協議の前提」が合っているかを一緒に整理することができます。
相続に関するご相談は初回60分まで無料です。状況整理だけでも構いませんので、お気軽にご相談ください(具体的な見通しは個別事情により異なります)。
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