遺産分割の話し合いでは、単に「財産をどう分けるか」だけでなく、過去の経緯が問題になることがあります。よくあるのが次のようなお悩みです。
- 親が特定の相続人に住宅資金などを援助していたのではないか
- 親の預金が生前に大きく減っており、使途が分からない
- 介護や生活支援をしてきたのに、取り分が同じなのは納得しにくい
- 「不公平だ」という感情が先に立ち、話し合いが止まってしまう
こうした場面で出てくる代表的な論点が、特別受益(生前贈与等の扱い)と、寄与分(被相続人への貢献の考慮)です。
このページでは、概念の基本と、話し合いを進めるための整理のしかたをまとめます。
まず大切なのは「感情」と「事実」を切り分けること
不公平感が強いケースでは、話し合いが「気持ちのぶつけ合い」になりやすい一方、合意形成に必要なのは、最終的に
- 何が、いつ、どのように行われたのか(事実)
- それが遺産分割でどのような論点になり得るのか(法的整理)
- どこまでを調整対象にするか(合意の範囲)
を順番に整理することです。
この順番が崩れると、相手の反論にさらに反論が重なり、協議が止まりがちです。
特別受益とは(生前贈与・援助をどう扱うか)
特別受益のイメージ
特別受益は、相続人の一部が被相続人から生前に贈与等を受けていた場合に、その事情を遺産分割の中で考慮し、相続人間の公平を図ろうとする考え方として整理されます。
ただし、何でも「特別受益だから差し引く」となるわけではなく、対象になり得るか、どの程度考慮されるかは、贈与等の趣旨や時期、金額、家庭の状況等によって異なります。
対象になり得る例
- 住宅購入資金の援助
- 結婚資金としての高額な贈与
- 事業資金の援助
などが問題として持ち上がることがあります。
生活費・教育費はどうなる?
生活費や学費等については、各家庭の事情や通常の扶養の範囲との関係があり、単純に結論が出ないことがあります。
「特別受益に当たるか」を断定するよりも、まずは事実(いつ、いくら、どの名目で)を整理し、論点になり得るかを検討することが重要です。
寄与分とは(介護・貢献をどう整理するか)
寄与分のイメージ
寄与分は、相続人のうち被相続人の財産の維持・増加に特別の貢献をした人がいる場合に、その貢献を遺産分割で考慮する考え方として整理されます。
介護や生活支援をしてきた方ほど、「同じ取り分なのは不公平だ」と感じることがあります。一方で、寄与分としてどこまで評価されるかは、介護等の内容・期間・他の相続人の関与・専門職の利用状況など、事情により異なります。
具体的に整理しやすい材料(例)
- 介護の期間、頻度、具体的な内容(通院付添、入退院対応等)
- 被相続人の支出状況(介護費用の負担、立替の有無)
- 仕事を休んだ、転居した等の事情があるか(裏付けがあると整理しやすい)
寄与分の議論は感情面に引っ張られやすいため、可能な範囲で「出来事の記録」と「支出の資料」を整理しておくと話が進みやすくなることがあります。
使途不明金・「使い込み」疑いがあるときの考え方
預金が大きく減っている、特定の相続人が通帳を管理していた、といった事情があると、「使い込みではないか」と疑いが生じることがあります。
ただし、相続の場面では、医療費・施設費・生活費・リフォーム代など正当な支出もあり得るため、まずは「疑い」だけで結論づけるのではなく、取引履歴等で事実を確認するところから始めるのが一般的です。
この局面で重要なのは、相手を強く非難する言葉を重ねるより、
- どの期間の取引を見たいのか
- 大きな出金があった日付と金額はどれか
- 説明があれば解消する点はどこか
を「確認事項」として整理することです。結果として、協議で説明が得られる場合もあれば、争点として残る場合もあります(事案により異なります)。
まず行うべき資料整理(交渉を止めないために)
特別受益・寄与分が絡むときは、資料整理が特に重要です。最初から完璧な証拠を揃える必要はありませんが、最低限、次のような形で整理できると話し合いが進みやすくなります。
1)年表(タイムライン)
- いつ、どんな援助(贈与)があったか
- 介護が始まった時期、施設入所時期
- 大きな預金移動があった時期
2)一覧表(表形式)
- 金額/日付/名目/裏付け資料(通帳・領収書・メモ)
- 不明点(要確認)を明記
3)取引履歴・領収書類
取引履歴が取れる場合、時系列で並べると状況が整理されやすくなります。
話し合いの進め方:争点を「増やしすぎない」工夫
不公平感があると、あれもこれも問題にしたくなる一方で、争点が増えすぎると協議が止まりやすくなります。そこで、次のように段階を分けて整理する方法が取られることがあります。
- まず遺産の範囲と評価額を確定(財産調査)
- 不動産の分け方など主要論点を先に整理
- 特別受益・寄与分は「資料に基づき、対象と範囲を絞って」検討
- 最終的に、合意できる落とし所(分割案)を作る
このように順序立てることで、感情的な応酬ではなく、検討事項として話を進めやすくなることがあります。
まとめ:不公平感のある相続ほど「資料と論点整理」が鍵になる
特別受益・寄与分は、相続人間の不公平感と直結しやすく、遺産分割が止まる原因になりがちです。
一方で、事実関係を資料で整理し、論点を切り分けて検討することで、話し合いが進む場合もあります。
当事務所では、相続に関するご相談は初回60分まで無料で承っています。特別受益・寄与分が絡むケースでも、資料整理や争点の整理からご相談いただけます(具体的な見通しは個別事情により異なります)。
手続や話し合いの中で迷いやすい点をQ&Aで整理します。
よくあるご質問(FAQ)
Q. 生前贈与はすべて特別受益になりますか?
生前贈与が直ちにすべて特別受益として扱われるとは限らず、贈与の趣旨や時期、金額などが問題になることがあります。具体的な扱いは事情により異なります。
Q. 親の介護をした場合、寄与分が認められることはありますか?
介護や事業への協力などが寄与分の検討対象になる場合がありますが、内容・期間・他の事情などを踏まえて判断されます。主張には整理資料が重要です。
Q. 特別受益・寄与分を主張するには何が必要ですか?
一般には、贈与や援助の事実、介護等の貢献内容を示す資料(振込記録、契約書、介護記録、領収書等)を集め、いつ・何が・どの程度かを整理します。
Q. 使い込みが疑われる場合の整理の仕方は?
まずは通帳や取引履歴などの客観資料を確認し、時期・金額・使途の説明状況を整理する方法があります。評価や対応方針は事案により異なるため、早めの相談が有用な場合があります。
相続に関するご相談は初回60分まで無料です。不公平感がある相続の争点整理や、資料の当たりの付け方からご相談いただけます(具体的な見通しは個別事情により異なります)。
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