相続手続きを放置し続けてしまった場合

相続問題は放置しがち…!

身近な人が亡くなってしまうと、まずは悲しい気持ちになったり、気分が落ち込んでしまったりしますよね。お気持ちが沈んでいる中で、行政の手続きや公共料金の契約関係の解約や名義変更など、いろいろとやらなねばならないことが出てきて、精神的にも辛いこと状態になられるかと存じます。

また、それらの取り急ぎ行わねばならない手続きを終えた後、ようやく相続問題に向き合おうと思っても、何から手を付けていいのかわからない、というお悩みはよく聞きます。

相続手続きをするために必要な調査

相続手続きを進めるためには、前提情報として、①相続人は誰か?、②遺産は何か?を調査する必要があります。

①相続人は誰か?について、例えば、「父親が亡くなったので相続の手続きを取ろうと思うのだが、相続人は妻である母親と、自分と、自分の妹のみである」という認識を持っている場合でも、きちんと相続人の調査をすべきです。ここで、相続人の調査というのは、被相続人(亡くなった人)が生まれてから死ぬまでの戸籍をすべて取り寄せることを指します。やや面倒に思うかもしれませんが、相続のどのような手続きをとるにせよ、ゆくゆくは必要になるものですので、この時点で取得しておくことを強くおすすめします。というのも、このケースでも、「実は父親は母親と婚姻する前に、別の女性との間に生まれていた子を認知していた」といったことが発覚し、思わぬ相続人が出現することがあります。相続の手続きを進めていき、終盤でこのような知られていなかった相続人が出現してしまうと、前提が変わってきてしまい、そこまでに重ねてきた議論が崩れてしまいますので、絶対に最初に調査をしておきましょう。

そして、②遺産は何か?という調査については、必要性はわかりやすいと思いますが、具体的に何から始めればいいのか?と悩んでしまわれる方も多いと思います。生前に被相続人からだいたいの財産の在処を聞いておけると調査もスムーズですが、全く情報がないときには、被相続人の身の回りのものや郵便物に、通帳や金融機関からのお知らせが含まれていないかを確認します。そういったヒントも一切ない場合には、都市銀行と、被相続人の最終住所地の近くにあるATMを運営する銀行などに、被相続人の口座の有無を確認していくしかありません。どこかに口座が見つかれば、その預金口座の取引履歴を取得して、金銭の流れを追うなど、新たなヒントを得られることがあります。

相続問題を放置してしまうきっかけ…

このように、相続手続きを進めるにあたり、前提としてすべき調査はわかりました。もっとも、そもそもこれらの調査をすること自体に負担を感じてしまったり、調査自体がうまく進められなかったりすることもあります。

また、相続人についても遺産についても、調査は完了して、大体の前提情報は収集できたとしても、例えば、相続人のうちの一人とは一切連絡が取れないとか、遺産分割協議を試みたが相続人間の対立が深まってしまったとか、被相続人の遺言書が見つかったが、その遺言書に自分または相続人の誰かが不満があるといった場合には、そこで相続の手続きがストップしてしまいます。

相続問題を長期間塩漬けにしてしまっている人も、多くは、最初は相続開始後すぐに処理をしようと動いてみたものの、上記を含む何等かの事情に直面してしまって、その後動きを取れなくなってしまった、と言います。そして、一度動きを止めてしまうと、再度動き出すのは至難の業です。そのまま10年経過してしまった、という話もあります。

放置するデメリット

相続をすること自体には、期間の制限などはありません。そういった事情もあいまって、一度動きを止めてしまうと動かすのにパワーが必要になってきてしまいますが、最近の相続法分野の改正で、放置するデメリットが生じましたので、最後にご説明します。

一番のデメリットは、ご自身が特別受益寄与分の主張をしたいと考えていた場合に、その主張が10年でできなくなってしまう点です。これは、令和5年4月1日から施行されているものなのですが、相続開始から10年を経過した後は、特別受益や寄与分の主張ができなくなるという改正がなされたのです。

なお、このような主張制限も、相続人全員の合意があれば関係がなく、相続開始から10年以上経過していても、問題ありません。もっとも、そもそも遺産分割の手続きが、10年以上終わっていないという状態は、何かしら相続人間で対立が起きていることが多く、「相続人全員の合意」を形成できるような状態ではないのが一般的です。そうなると、やはりご自身が特別受益や寄与分の主張をした方が有利になるような場合には、この主張制限がかかってしまうことを意識して、早めに遺産分割の手続きを進めていくことをおすすめします。

最後に

上記のとおり、相続問題は、放置されてしまう傾向にあること、それによって不利益を被ることがあることを確認しました。このようなことを防ぐためには、そして早めにすっきりと解決するためには、少しでも相続問題を進めるのが難しいと感じた時点で、弁護士に相談することをおすすめします。相続問題は、想定以上に解決までに時間を要することもありますし、一度ストップしてしまうと、再度進めるのは困難です。ゆっくりでも歩みを止めないことが重要ですので、歩みを止めてしまいそうになった時には、一度法律事務所を訪れてみてください。

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