遺贈とは?法定相続人以外に財産を遺したい場合
遺言がないまま被相続人が亡くなって、相続が開始されると、被相続人の財産は、法定相続人の間で、法定相続分に従って分割されることになります。しかし、法定相続人ではない方に何らかの財産を残したいとお考えの方もいらっしゃると思います。
その際の方法として考えられるのが「遺贈」という制度です。
・遺贈とは
遺贈とは、被相続人が遺言によって他人に自分の財産を与える行為のことをいいます。ですから、相続人ではない人に、死後、財産を譲りたいと考えている場合は、遺贈の方法を使うことになります。
なお、遺贈自体は、第三者だけでなく、相続人に対してもすることができますが、例えば、「自宅を長男に相続させる」というように特定の遺産を特定の相続人に相続させる旨の遺言や、「全財産を長女(相続人)に相続させる」旨の遺言は、遺言者の別段の意思表示がない場合は、遺贈ではなく、遺産分割方法の指定(民法第908条)として扱われることになっています。
遺贈には、特定遺贈と包括遺贈の二種類がありますので、以下、ご説明します。
・特定遺贈とは
特定遺贈とは、受遺者(遺贈を受ける人のことです)に与えられる目的物や財産的利益の特定がされている遺贈のことを言います。たとえば、「Aに甲マンションを譲る」とか「Bに預金の中から100万円を譲る」とか「Cに乙社の株式1000株を譲る」といったような遺言が特定遺贈に当たります。
基本的には前記のように何らかの所有権を目的とすることが多いと思いますが、「Dのために丙土地に地上権を設定する」というような遺言も遺贈として処理して良いとされています。
・包括遺贈とは
包括遺贈とは、遺産の全部又は一定割合で示された部分の遺産を受遺者に与える遺贈のことを言います。「自分の全財産をE(相続人ではない人)に譲る」とか「自分の財産の3分の1をF財団に寄付する」というような遺言がこれに当たります。
このような遺言の場合、特定財産とは異なり、目的物等が特定されていないため、被相続人に属していた権利のみならず、義務も含めて遺言で指定された割合が受遺者に承継されることになり、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有することになります(民法990条)。
もっとも、相続人とみなされるわけではないので、相続人と全く同じというわけではありません。例えば、包括受遺者は、相続人と同様に、遺贈を放棄したり、単純承認したり、限定承認したりすることはできますが、代襲制度はありませんし、遺留分権もありません。
・まとめ
このように、遺贈の制度を利用すれば、相続人以外の方にもご自身の財産を遺すことが可能ですが、ご自身が望むように遺贈を行うためには、法定相続人が存在しないようなケースを除いては、法定相続人の遺留分等に配慮した遺言書を作成しておく必要があります。
どのような遺言書を作成しておくべきか、お困りの際にはぜひ弊所にご相談ください。
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