Columnコラム

相続で必要になる「名寄帳(なよせちょう)」とは

相続関連の手続きの際に、「名寄帳(なよせちょう)が必要」といわれることがあります。

とはいえ、なかなか馴染みのない言葉で、「人生で初めて聞いた」「どこに行けばもらえるの?」というご相談者の方も少なくありません。

ここでは、名寄帳とはどのような書類なのか解説していきます。

1 名寄帳とは

名寄帳(なよせちょう)とは、地方税法第387条第1項に基づいて作成されるもので、土地と家屋の固定資産課税台帳について所有者ごとにまとめたものをいいます。所有者ごとに不動産がまとめられていますので、特定の人が持っている不動産を一覧で確認することができます。また、非課税の土地については、固定資産税の納税通知書には記載されませんが、名寄帳には、課税の有無や登記・未登記を問わず、すべての不動産に関する情報が記載されます。

そのため、相続財産の調査の際には、ぜひ取得することをおすすめいたします。

2 名寄帳の取得方法

名寄帳は、不動産所在地の市区町村役場で取得できますが、個人の不動産に関する情報が記載されていますので、基本的に不動産の所有者(固定資産税の納税義務者)本人や本人から委任された代理人、本人が死亡した場合は相続人でなければ交付申請できません。

本人が交付申請する際には、運転免許証等の本人確認書類があれば良いですが、本人以外が交付申請する際には、以下の書類が必要となります。

① 相続人が申請する場合

・死亡した方との関係がわかる戸籍謄本

・死亡した方の除籍謄本

・申請する相続人の本人確認書類

② 代理人が申請する場合

・委任者が署名押印した委任状

・代理人の本人確認書類

 

3 取得の際の注意点

固定資産税は、1月1日現在の所有者に課税されますので、固定資産課税台帳には1月1日現在の情報が登録されています。そのため、固定資産課税台帳について所有者ごとにまとめた名寄帳にも、1月1日時点で被相続人が所有していた不動産しか記載されません。そのため、被相続人が1月2日以降に不動産を取得して死亡した場合には、名寄帳を確認したとしても、新たに取得した不動産は記載されていないということになります。

また、名寄帳は同一市区町村内の不動産について作成されるため、他の市区町村に存在する不動産は記載されません。

さらに、法人名義で所有している不動産は、死亡した方個人の名寄帳には記載されません。

このように、相続不動産に関しては、名寄帳さえ確認すれば万全というわけにはいきませんので、注意が必要です。

 

4 所有不動産記録証明制度の新設

最近は、先代が所有していた不動産を相続人が知らない、という例も多くなっています。

そこで、ご自身や被相続人が登記名義人になっている不動産のリストを証明書として取得することで、登記の申請にあたっての手続き負担を軽減し、登記漏れを防止するための「所有不動産記録証明制度」が創設されることになりました(令和8年4月までに施行予定)。

これは、いわゆる名寄せを可能にするもので、この制度により、特定の者が名義人となっていて相続登記が必要な不動産を容易に把握することができるようになります。

 

5 まとめ

以上のとおり、名寄帳は、特定の人が所有する不動産を一覧で確認できるため、相続財産調査の際には非常に役に立ちます。しかし、名寄帳の記載にも漏れがあり得ることは前述のとおりですので、名寄帳さえ取得すれば不動産の調査としては十分というわけではありません。相続財産の調査が不十分ですと、後々めんどうな問題が生じ得ますので、専門家も活用して慎重に行うことをおすすめいたします。

 

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