要点
- 遺留分は、一定の相続人に保障された取り分で、侵害がある場合は遺留分侵害額請求として金銭の支払いを求めることができます(民法第1046条、民法第1042条)。
- 実務では、①相続関係と遺言の確認→②財産目録の整理と概算→③内容証明等で意思表示→④交渉→⑤調停・訴訟、という流れで整理することが多いです。
- 期限や資料の揃い方で進め方が変わるため、早めに「争点」と「次にやるべきこと」を整理することが大切です。
はじめに:遺留分の請求は「順序立てる」と見通しを立てやすい
遺言の内容が偏っている、相手方が財産を開示しない、連絡がかみ合わない――遺留分の問題は、法律の話だけでなく、相続人間のコミュニケーションも絡みやすい分野です。
このページでは、遺留分侵害額請求(遺留分の請求)について、請求する側の一般的な進め方を「ステップ形式」で整理します。
※個別具体的な判断は事情により異なります。
遺留分侵害額請求とは
遺留分は、一定の相続人に保障される最低限の取り分です(民法第1042条)。
遺言や贈与によって遺留分が侵害されている場合、遺留分権利者は、侵害している相手方に対して、一般に金銭の支払いを求めることが検討されます(民法第1046条)。
まず大切なのは、「自分が遺留分権利者に当たるか」「侵害があるといえるか」を、資料に沿って整理することです。
全体の流れ(ステップ一覧)
Step1:相続人関係・遺言書・当面の資料を確認
Step2:財産の全体像を整理し、概算の見通しを立てる
Step3:内容証明等で意思表示を行い、記録化する
Step4:交渉(支払方法・期限・代償金など)で合意を目指す
Step5:まとまらない場合は調停・訴訟を検討する
以下、それぞれをもう少し具体化します。
Step1:相続人関係・遺言書・資料の確認
1) 相続人を確定する(戸籍)
遺留分の有無や割合は、相続人の構成で変わります。
そのため、最初に戸籍等で相続人関係を確定することが出発点になります。
2) 遺言書の有無と内容を確認する
遺言書がある場合、誰に何をどのように承継させるか(遺贈・特定財産承継など)の記載が、遺留分侵害の判断に直結します。
遺言書の種類(公正証書/自筆証書など)や保管状況によって確認方法も変わるため、まずは遺言の有無・種類の確認から着手しましょう。
3) いま手元にある資料を集める(不十分でもOK)
初期段階で集めやすい例:
- 遺言書(写しでも可)
- 相続関係が分かる戸籍一式(取得途中でも可)
- 預金通帳の写し、残高証明(ある範囲で)
- 固定資産税の納税通知書、登記事項証明書(不動産がある場合)
- 保険証券、有価証券の通知
- 相手方とのやり取り(メール・書面)
「揃っていないから進められない」と考えるより、現時点で何が分かっていて何が分からないかをリスト化するだけでも次の検討事項が見えやすくなります。
Step2:財産の全体像を整理し、概算の見通しを立てる
遺留分は「割合」だけでは決まりません
遺留分には割合がありますが、実際の請求額は、次のような前提整理が必要になります。
- 遺留分算定の基礎となる財産(基礎財産)の整理(民法第1043条)
- 生前贈与の算入の有無・範囲(民法第1044条)
- すでに取得した財産や特別受益に当たり得る事情の整理(民法第1046条、民法第1044条)
特に、不動産評価や生前贈与(特別受益)が絡むと、前提次第で試算が変わることがあり、早期に争点を見極めることが重要です。
- 関連記事:遺留分の計算方法
- 関連記事:生前贈与・特別受益の基本
- 関連記事:不動産がある相続の遺留分(評価・代償金)
Step3:内容証明等で意思表示を行い、記録化する
遺留分侵害額請求は、後から「期限内に請求したか」が問題になり得るため、意思表示を記録として残すことが重要になります(民法第1048条前段)。
実務では、内容証明郵便で請求の意思表示を行い、送付日・到達が確認できる形を整えるのが通常です。もっとも、記載内容や送付のタイミングは、把握できている資料・相手方との関係・争点によって調整が必要です。
- 関連記事:内容証明郵便での遺留分請求
Step4:交渉で合意を目指す
相手方が請求に応じる場合でも、実際には
- 一括で払えるのか
- 不動産や株式を換金する必要があるのか
- 分割払いや支払期限の調整が必要か
といった「実務上の調整」が問題になることがあります。
遺留分侵害額請求は、最終的には金銭の支払額が主たる調整内容になる一方(民法第1046条)、財産の内容はケースごとに異なるため、支払方法の合意も含めて現実的な着地点を探ることが重要です。
交渉で意識したいこと(対立を深めないために)
- 金額の前提(評価・贈与の扱い)をそろえる
- 連絡窓口を一本化し、やり取りを整理する
- 期限(民法第1048条)が関係する場合は、対応の優先順位を誤らない
弁護士が窓口になることで、過度な感情的応酬を避けつつ、必要事項を整理した協議に切り替えられる場合があります。
Step5:まとまらない場合は調停・訴訟を検討する
交渉で折り合いがつかない場合、家庭裁判所の調停や、訴訟による解決を検討することになります。
裁判所の手続に進むかどうかは、次のような要素で判断が分かれやすい傾向があります。
- 不動産評価や生前贈与の有無などで、話し合いによって折り合いをつけるのが難しい場合
- 相手方が協議に応じない、連絡が取れない
裁判所の手続に進める場合でも、事前に争点と資料を整理しておくことで、見通しが立てやすくなります。
- 関連記事:遺留分の調停・訴訟の流れ
よくあるつまずき(進め方で迷いやすい点)
相手が財産を開示してくれない
遺留分の試算には財産の全体像が重要です。開示が不十分な場合でも、手元資料から推定できる部分と、追加で確認すべき資料を整理し、相手の協力を得なくても自分で調査できるものは調査するなど、進め方を工夫する必要があります。
不動産の評価で話が進まない
評価前提がズレると、金額の合意が難しくなります。不動産がある場合は、評価の前提をどう置くかが交渉の重要なポイントになります。
生前贈与が疑われるが、確証がない
疑いの段階で断定的に主張すると、関係が悪化して協議が進みにくくなることもあります。資料に基づき、どのように主張・交渉を進めていくかを考えることが重要です。
弁護士に相談するメリット
遺留分侵害額請求は、権利行使の期限(民法第1048条)の管理や計算の前提整理(民法第1043条、民法第1044条、民法第1046条)と、相手方との調整が同時に進んでいきます。
弁護士に相談することで、次のような点を整理しやすくなります。
- 争点(評価・贈与・期限)の優先順位付け
- 内容証明の文面・送付のタイミング等の検討
- 窓口の一本化による精神的負担の軽減
- 他士業・専門業者との連携が必要な場面の見極め
※見通しは事案により異なり、特定の結果を保証するものではありません。
進め方を整理したい方へ(初回相談のご案内)

「何から始めればよいか分からない」「相手と連絡を取ること自体が負担」「期限が心配」―そうした段階でも、状況整理からご相談いただけます。
当事務所では相続(遺留分を含む)のご相談を初回60分無料でお受けしています。
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