要点
- 遺留分の算定では、生前贈与が相続財産に算入されるかが争点になり得ます(民法第1044条)。
- 「贈与だ」「特別受益だ」と断定する前に、通帳・振込記録等の資料から、事実関係を丁寧に整理することが重要です。
- 期限が関係する場合は(民法第1048条)、資料収集と並行して、状況に応じた意思表示の記録化を検討することがあります。
はじめに:「相続人の一部に対し、生前に偏った援助があった気がする」—疑い段階の整理が重要
遺留分の相談は、「生前に長男だけが援助を受けていた」「長女が親の預金をいつの間にか引き出していた」といった“疑い”から始まることが多くあります。
ただ、疑いの段階で強い言葉で相手を責めると、感情的な対立が激しくなり、協議が難しくなることがあります。まずは、遺留分の計算に影響し得る生前贈与(相続財産への算入の対象になり得る範囲)の枠組み(民法第1044条)を押さえつつ、確認ポイントを整理します。
生前贈与が遺留分に影響する理由
遺留分は、被相続人が相続開始時に有していた財産の価額に、被相続人が贈与した財産の価額を加え(持ち戻し)た額から債務の全額を控除した額をもとに算定します(民法第1043条1項)。
このように、遺留分算定のもととなる基礎財産の価額には、一定の贈与が算入される場合があります(民法第1044条)。このため、贈与の有無・範囲は、遺留分の試算を大きく左右します。
もっとも、被相続人から相続人に対する贈与の場合、持ち戻しの対象となるのは原則として「特別受益」(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与。民法第1044条3項)に限られます。
「特別受益」として問題になりやすい類型
※以下は一般的な例で、個別の事案では性質の評価が分かれる可能性があります。
① 住宅購入資金や頭金の援助
金額が大きい場合、特別受益として整理が必要になることがあります。
② 事業承継に伴う株式の移転
自社株(非上場株式)の移転は、評価・時期・趣旨・対価の有無等の整理が重要です。
③ 名義預金の疑い
口座名義は子でも、原資・管理状況によっては被相続人の財産として評価されるべきかが争点になり得ます(※ここでは一般論に留めます)。
④ 多額の学費・生活費援助
通常の扶養の範囲か、特別受益といえるか等、事情により評価が分かれる可能性があります。
確認に役立つ資料
疑いを確かめるには、まず資料の「当たり」をつけることが重要です。
- 被相続人の通帳、取引明細(入出金履歴、振込先・振込額等の確認)
- 相手方の通帳(開示の可否、開示の範囲が争点になることも)
- 贈与契約書、念書、覚書等の書面
- 不動産購入契約書、ローン契約書、頭金の額、ローンの返済状況等が明らかになる資料
- 株式移転関係書類(株主名簿、株式譲渡契約書等)
注意点:疑い段階で「断定しない」ことの意味
生前贈与は、事実認定と評価が絡みます。
断定的に「特別受益だ」「使い込んだ」等と主張すると、相手が防御的になり、必要な資料が出てこなくなる場合があります。
実務上は、
- 現時点で把握できている事実
- 確認が必要な事項(開示してほしい資料)
を分けて伝える方が、交渉の入口としては適することがあります。
期限との関係:資料収集と並行して検討すべきこと
遺留分侵害額請求では期間制限が問題になります(民法第1048条1項)。
生前贈与の調査に時間がかかる場合でも、期限の到来が近い可能性があるときは、個別の事案によっては
- 経緯の整理(いつ知ったか)
- 意思表示の記録化(内容証明等)
を並行して検討することがあります。
弁護士に相談するメリット(生前贈与が疑われるケース)
- 争点になり得る生前贈与の整理
- 必要資料の整理、優先順位付け
- 感情的な対立を避けつつ、相手方と協議する
- 期間制限への対応
※事案により見通しは異なり、特定の結果を保証するものではありません。
生前贈与の疑いがあるときの整理から(初回相談無料)

生前贈与が遺留分に影響するかは、事実関係と資料の整理が重要です。
当事務所では相続(遺留分を含む)のご相談を初回60分無料でお受けしています。
- 全国対応/来所・オンライン相談可(本人確認等)
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- 電話受付:平日9:00~20:00(夕方以降可・予約制)
よくある質問(生前贈与と遺留分)
Q.証拠がないのですが、遺留分の請求は難しいですか?
個別具体的な事情によります。まずは手元資料から事実関係を整理し、何を確認すべきかを明確にすることが重要です。
Q.相手に贈与のことを聞くと揉めそうです。
伝え方によっては、対立を避けつつ確認を進められる場合があります。協議の窓口を一本化することも含めて検討します。
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