要点
- 遺留分は「割合」だけでなく、まず遺留分算定の基礎となる財産(基礎財産)の整理が重要です(民法第1043条、民法第1044条)。
- 生前贈与(特別受益に当たり得るもの)や不動産評価が関係すると、前提次第で試算が変わることがあります(民法第1043条、民法第1044条)。
- 請求期限があるため、請求額が確定していなくても、状況に応じて早めに整理・請求意思の表示を検討する必要があります(民法第1048条)。
はじめに:遺留分の「計算」は、まず前提整理から始まります
遺留分について調べていると、「割合(2分の1、3分の1など)」が先に目に入ります。しかし実務では、割合以前に、次の点でつまずくことが少なくありません。
- そもそも遺産がどれだけあるのか把握できない
- 生前贈与がありそうだが、どこまで計算に入るのか分からない
- 不動産の評価額次第で請求額が大きく異なる
- 遺留分の請求額がいくらになるのか想像できない
このページでは、遺留分の計算を「いきなり難しい式」から始めず、どの順番で何を整理するのかを中心に、一般的な枠組みを解説します。
※条文の文言は引用せず、根拠条文番号のみ示します。
遺留分の計算で出てくる用語
- 遺留分権利者:遺留分を持つ人(例:配偶者、子、直系尊属など)(民法第1042条)
- 遺留分算定の基礎となる財産(基礎財産):遺留分の計算の土台となる金額(民法第1043条、第1044条)
- 遺留分侵害額請求:遺留分が侵害されている場合に金銭の支払いを求めること(民法第1046条)
- 期間制限:一定期間内に請求しないと権利行使が制約され得る(民法第1048条)
計算の全体像(大まかな5ステップ)
遺留分の「請求額」を考えるとき、一般的には次の順に整理します。
- 遺留分権利者を確定する(民法第1042条)
- 基礎財産を算定する(民法第1043条、第1044条)
- 基礎財産に遺留分の割合を乗じ、遺留分権利者の遺留分額を算定する
- すでに得ている財産や特別受益の整理を踏まえ、遺留分侵害額を算定する(民法第1046条)
- 相手方に遺留分侵害額請求をする(民法第1046条)※期限にも留意(民法第1048条)
以下、特に争点になりやすい「2)基礎財産」と「4)遺留分侵害額」を中心に説明します。
ステップ1:相続人と遺留分権利者を確定する
遺留分の割合は、「誰が遺留分権利者か」により変わります(民法第1042条)。
その前提として相続人の範囲を確定する必要があります。 相続人の確定は戸籍により行います。
- 例:配偶者+子がいる/子のみ/直系尊属のみ、などで遺留分の割合が変わります
- 兄弟姉妹には遺留分がありません(民法第1042条)
ステップ2:遺留分算定の基礎となる財産(基礎財産)を算定する
基礎財産の考え方(大枠)
基礎財産は、一般的に
- 相続開始時に被相続人が有していた財産
- 一定の生前贈与(算入される範囲が問題になる)
- 債務の控除
などを踏まえて算定します(民法第1043条、第1044条)。
ここで重要なのは、「遺産=相続開始時の財産」だけで完結しない場合があることです。生前贈与が絡むと、基礎財産の前提が変わり得ます(民法第1044条)。
相続開始時の財産(例)
- 預貯金、現金
- 不動産
- 株式・投資信託等の有価証券
- 自社株(非上場株式)
- 自動車、貴金属等
- 貸付金、売掛金等の債権
不動産や非上場株式は評価額が争点になりやすい傾向があります。
債務(借入等)との関係
基礎財産の算定では、債務の存在も無視できません。
何が控除対象となるのかについて、事案により整理が必要です(基礎財産の枠組み:民法第1043条)。
ステップ3:遺留分額(割合)を当てはめる
基礎財産が確定したら、相続人構成に応じた遺留分の割合を乗じて、各人の遺留分額を計算します(遺留分権利者の枠組み:民法第1042条)。
ここは「早見表」的に整理できる部分ですが、実務上は、次のステップ(侵害額)で再び前提が揺れやすくなります。
ステップ4:生前贈与(特別受益等)がある場合の注意点
生前贈与が基礎財産に影響することがある
遺留分の算定では、生前贈与が基礎財産に算入されるかが問題になることがあります(民法第1044条)。
特に、相続人の一部が被相続人から生前に多額の援助を受けていた場合、どこまでをどう扱うかにより試算が変わり得ます。
典型的に問題になりやすい例
- 住宅購入資金の援助
- 多額の学費・留学費用の援助(性質の判断が分かれ得る)
- 会社の株式の移転
- 名義預金の疑い(相続人の財産といえるのかが争点になり得る)
※「贈与」か否かについて、資料(通帳・振込記録・契約書等)と事情をもとに整理することが重要です。
生前贈与が疑われるときに集めたい資料
- 銀行の入出金履歴、振込記録
- 贈与契約書・念書
- 不動産の購入契約、ローン関係書類
- 固定資産税の納税状況
- 会社の株主名簿、株式移転関係書類
ステップ5:遺留分侵害額(請求額)を算定する
遺留分侵害額請求は、遺留分が侵害されている場合に金銭の支払いを求めるものです(民法第1046条)。
「遺留分額=請求できる金額」とは限らず、一般には、すでに取得した財産や生前贈与などを踏まえて整理します。
すでに受け取っているものがある場合
相続により一定の財産を取得している、保険金の扱いが問題になる等、事案により整理が必要です。
どこまでをどのように考慮するかは、資料と事情に応じて検討します。
相手方(誰に請求するか)の整理も重要
遺留分侵害額請求の相手方は、遺贈・贈与などにより遺留分を侵害している人です(民法第1046条)。
相手方が複数になるケースもあるため、請求先の整理を誤ると交渉が複雑になることがあります。
計算でつまずきやすいポイント(よくある争点)
①不動産評価
不動産の評価は、相続税評価、時価、鑑定など、目的により評価方法が異なります。
評価方法により金額が変わるため、前提を揃えることが重要です。
②生前贈与の有無・範囲
どの生前贈与を基礎財産に算入するかは、争点になりやすい部分です(民法第1044条)。
疑わしい段階では、断定的な主張をするよりも「確認すべき事実」と「根拠資料」を整理していく方が、話し合いが進展しやすいです。
③財産の全体像が見えない(開示されない)
相手方が財産を開示しない場合、試算自体が難しくなります。
ただし、手元資料から推定できる部分と、追加で必要な資料を切り分けることで、次の一手を組み立てられる場合があります。
期限との関係:金額が確定していなくても「整理」を急いだ方がよい場合
遺留分侵害額請求には期間制限があります(民法第1048条)。
遺留分侵害額が確定していなくても、期限が迫っている場合には、まずは以下を検討します。
- 経緯の整理(相続の開始及び遺留分を侵害する贈与などがあったことをいつ知ったか)
- 資料の確保
- 必要に応じた意思表示の記録化(内容証明等)を優先する。
弁護士・他士業と連携して整理した方がよい場面
遺留分を検討する際は、法律(基礎財産・算入・請求)(民法第1043条、第1044条、第1046条)だけでなく、評価や税務、登記などの論点を同時に検討する必要がある場合があります。
次のような場合、弁護士が窓口となり、必要に応じて他士業・専門業者と連携して整理することが有効です。
- 不動産評価が争点になる
- 自社株(非上場株式)がある
- 生前贈与の疑いがあり、資料の検討が必要
- 請求期限が近い可能性がある(民法第1048条)
計算の見通しを立てたい方へ(初回相談無料)

遺留分の計算は、割合だけでなく、基礎財産や生前贈与、不動産評価などの前提部分で試算が変わります(民法第1043条、第1044条)。
「いくら請求できそうか」「どのような資料を集めればよいか」から整理したいという段階でもご相談いただけます。
当事務所では相続(遺留分を含む)のご相談を初回60分無料でお受けしています。
- 全国対応/来所・オンライン相談可(事前の本人確認等のお手続をお願いする場合があります)
- 東京駅徒歩約5分
- 電話受付:平日9:00~20:00
- 夕方以降のご相談も可能(予約制)
お問い合わせ:電話/問い合わせフォームよりご連絡ください。
よくある質問
Q1. 遺留分の割合さえ分かれば、請求額はすぐ出ますか?
割合は重要ですが、請求額は基礎財産の整理や生前贈与の扱い、不動産評価などによって変わります(民法第1043条、第1044条)。そのため、前提資料の確認が必要になることが多いです。
Q2. 生前贈与があったかもしれませんが、証拠がありません
疑わしい段階で断定的に主張すると、協議が難しくなる場合があります。通帳や振込記録など、確認できる資料から整理していくことが重要です(生前贈与算入の枠組み:民法第1044条)。
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