要点
- 認知症と診断されていても、遺言が直ちに無効になるとは限らず、遺言作成時点の状態が重要になります。
- 意思能力の検討では、医療・介護記録、生活状況、作成経緯などを組み合わせて評価します(結論は事情によります)。
- まず遺言作成日を中心に、前後の出来事と資料を時系列で整理するのが実務上の第一歩です。
認知症でも遺言は「常に無効」ではない
「認知症の親が書いた遺言は無効にできるのか」という疑問は多いものの、一般論としては、認知症=直ちに遺言無効とは限りません。
遺言の有効性は、遺言作成時点に本人が内容を理解し、自分の意思として判断できたか(意思能力)などが問題となり得ます。
そのため、診断名の有無だけでなく、遺言を書いた(作成した)日付の具体的状態を資料に基づいて検討することになります。
意思能力の判断で見られやすい要素
1) 遺言内容の複雑性
- 財産が多岐にわたる(不動産複数、株式等)
- 受遺者が多い、配分が細かい
- 条件や理由付けが複雑
内容が複雑になるほど、作成時点の理解・判断が争点になりやすい場面があります。
2) 医療・介護上の状態(遺言時点)
- 認知機能検査や医師所見(実施されていれば)
- せん妄、妄想、見当識障害の有無
- 服薬状況(薬の影響が主張されることもあります)
3) 日常生活の具体
抽象的な「しっかりしていた/していなかった」だけでは評価が難しいことがあります。
会話の成立、金銭管理、通院の付き添い、契約の理解状況など、具体を整理します。
4) 作成経緯(本人主導か/第三者主導か)
- 誰が遺言作成を提案・手配したか
- 同席者・付添人は誰か
- 下書きや案文は誰が作ったか
- 本人が内容を説明できる状況だったか
作成経緯は、意思能力の評価とも結びついて検討されることがあります。
収集を検討したい資料等(例)
入手できるかどうかは状況にもよりますが、一般論として以下のようなものが検討対象になります。
- 医療:診療録(カルテ)、検査結果、処方履歴、所見
- 介護:介護認定資料、ケアプラン、施設記録、訪問記録
- 生活:金銭管理の状況、同居/別居、連絡状況
- 作成された経緯:同席者、連絡者、保管者、遺言書発見の経緯など
よくある質問(FAQ)
Q. 認知症の診断があれば遺言は無効ですか?
診断名だけで直ちに無効とは限りません。
遺言作成時点の状態を、医療・介護記録や生活状況などから具体的に検討することが多いです。
Q. どの程度の認知症だと無効になりやすいですか?
一律の線引きは難しく、遺言内容の複雑性や当時の具体的状況も総合して検討されます。
結論は事案により異なります。
Q. 介護施設に入所していたら無効になりやすいですか?
入所の事実だけで直ちに決まるわけではありません。
入所理由、当時の状態、面会状況、作成経緯などと合わせて検討されます。
Q. 医療記録(診療録)はどうやって入手しますか?
所定の手続が必要となることが多く、相続人として取得できる範囲や方法は事情により異なります。
早期に方針を整理して動くことが有益な場合があります。
Q. 公正証書遺言でも認知症を理由に争えますか?
方式面の争いは起きにくい傾向がありますが、意思能力が争点となる場合はあります。
必要資料については、作成経緯も含めて検討します。
Q. まず家族が作るべき資料はありますか?
遺言作成日を中心に、受診・入退院・介護開始・同居開始等を並べた時系列表を作成してみるのが有益です。
どの資料が足りないかの当たりも付けやすくなります。
関連記事
- 意思能力を示す資料の集め方(証拠チェック)
- 成年後見と遺言の関係を確認する
総合解説: 「遺言無効」全体の流れ(争点・証拠・手続)をまとめて読む
ご相談をご検討の方へ(初回相談60分無料)

認知症が争点となる場合、遺言作成時点の状態を裏付ける資料の確保が重要になり得ます(入手可否は事情によります)。 医療・介護記録の見通しも含め、状況整理の段階からご相談いただけます。
- 初回相談:無料(60分まで)
- 電話受付:平日9:00~20:00
- 対応エリア:全国(オンライン相談可/本人確認等あり)
- 所在地・アクセス:東京駅徒歩約5分
- 相談時間:夕方以降可(予約制)
遺言トラブル関連記事
遺言無効とは?「無効」・「取消し」・「遺言の解釈」の問題の違い
公正証書遺言でも無効になり得る?争点になりうる事項(意思能力・手続・内容)
特定の相続人が遺言作成に関与していた場合の注意点(同席・主導・囲い込み)



