要点
- 遺言の争いは「無効」「取消し」「遺言の解釈(読み方)」で整理が変わり、必要な証拠や手続の考え方も変わり得ます。
- 認知症や「騙された」疑いは、無効だけでなく取消しの整理になることもあります(事情によります)。
- まずは遺言の種類・作成日・作成経緯を押さえ、争点を切り分けることが重要です。
遺言の「効力」を争うとき、最初にすること
遺言の内容に納得できない場合でも、いきなり「無効だ」と結論づけるのではなく、どのタイプの争いかを整理することが重要です。
理由はシンプルで、争いのタイプが変わると、
- 何を集めるべきか(証拠の種類)
- どの手続が合うか(交渉・調停・訴訟などの選択)
- 代替策(遺留分など)をどう組み合わせるか
が変わり得るためです(もちろん個別事情によります)。
「無効」「取消し」「遺言の解釈」:それぞれのイメージ(一般論)
1) 無効とは
無効は、最初から法律上の効力が生じないという意味です。
遺言の場合、典型的には方式違反(自筆証書遺言の方式要件を欠く等)や、遺言時の意思能力が問題となる場面で無効が争点になります。
2) 取消しとは
取消しは、一般に一定の要件があれば、後から効力を否定できるという整理です。
たとえば「騙された」「脅された」といった事情がある場合、詐欺・強迫(民法第96条第1項)の枠組みで検討されることがあります。
民法第96条第1項
詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
※遺言との関係でどう整理されるかは、事情により異なります。
3) 遺言の解釈の問題とは
遺言が形式的に有効でも、文言があいまいで「この不動産を指すのか」「誰に渡す趣旨か」などが争われる場合があります。
この場合、無効ではなく遺言の解釈(読み方)の問題として整理されることがあります(個別事情によります)。
争点の切り分けチェック
次の問いを順に確認すると、入口を整理しやすくなります。
- 遺言の種類は?(自筆証書/公正証書/秘密証書など)
- 方式の疑いは?(日付・署名押印・自書など)
- 作成時点の本人の状態は?(認知症、せん妄、入院、服薬等)
- 作成経緯に不自然さは?(同席、主導、面会制限、情報遮断等)
- 本人が作ったか疑わしい点は?(筆跡、日付、印影、改ざんの疑い)
この切り分けにより、集める資料の優先順位が見えやすくなります。
無効請求が難しいときの「次善策」:遺留分の並行検討
遺言の無効・取消しの見通しが読みにくい場合でも、遺留分侵害額請求(民法第1046条第1項)は検討しておくべき場合があります。
遺留分には期間制限が問題になることがあるため、無効の検討中でも遺留分の期限についてもあらかじめ確認しておくことが、結果的に選択肢を広げる場合があります。
民法第1046条第1項
遺留分権利者は、受遺者又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
よくある質問(FAQ)
Q. 「遺言が無効」と「取り消せる」は何が違いますか?
無効は最初から効力が生じないという整理、取消しは一定の要件があれば後から効力を否定できるという整理になり得ます。
どちらに当たるかは、主張内容や作成状況など事情によって変わり得ます。
Q. 遺言の文言があいまいな場合は無効ですか?
直ちに無効とは限らず、解釈として意味づけがされることがあります。
文言の内容や財産の特定状況、周辺事情により結論が変わり得ます。
Q. 無効主張と遺留分請求は同時にできますか?
並行して検討するのが有益な場合があります。
特に遺留分は権利行使の期間制限が問題になるため、早めに確認することが重要です。
Q. まず何から着手すればよいですか?
遺言の種類・作成日・作成経緯・財産の全体像などを整理し、争点(方式・意思能力等)を切り分けます。
そのうえで必要資料の優先順位を決めると進めやすくなります。
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