【この記事の要点】
- 死亡保険金(受取人指定あり)や遺族年金は、原則として相続放棄しても受け取れます。
- 未支給年金や還付金などは「遺産」とみなされ、受け取ると放棄できなくなるリスクがあります。
- 判断に迷う財産を受け取ってしまう前に、必ず専門家へ確認することをお勧めします。
「借金は相続したくないけれど、生活のために受け取れるお金があるなら受け取りたい」
「保険金を受け取ってしまったら、もう相続放棄はできないの?」
相続放棄を検討されている方から、最も多く寄せられる質問の一つが「お金」に関することです。
法律には「相続財産(遺産)」に含まれるものと、そうでない「固有財産」という区別があります。この線引きを誤り、うっかり遺産を受け取ってしまうと、「法定単純承認」として借金の返済義務まで背負うことになりかねません。
この記事では、判断に迷いやすい項目(生命保険、未支給年金、退職金、還付金など)について、法的な取り扱いを徹底解説します。
何を受け取ると「NG(単純承認)」になるのか、以下の記事でも詳しく解説しています。
やってはいけない!「法定単純承認」になる行為一覧
【○ 受け取れる】相続放棄しても問題ない財産
これらは、民法上「被相続人の遺産」ではなく、「受取人固有の権利」や「社会保障上の権利」として扱われます。したがって、受け取っても、使っても、相続放棄の手続きには影響しません。
① 死亡保険金(生命保険金)
最も重要なのが生命保険です。判断基準は**「受取人が誰になっているか」**です。
- 受取人が「妻」「子」「〇〇(個人名)」の場合:
その人の「固有財産」となるため、受け取れます。
最高裁の判例でも、死亡保険金は原則として遺産分割の対象にならないとされています。 - 受取人が「被相続人(本人)」の場合:
本人の財産(遺産)となるため、受け取れません。
(※住宅ローンの団体信用生命保険などがこれに該当するケースがありますが、これは銀行に直接支払われるため手続きが異なります。)
【注意:税金の話は別】
民法上は受け取れますが、税法上は「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。
ただし、相続放棄をした人でも「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠の計算には含まれるため、必ずしも全額に課税されるわけではありません。
② 遺族年金
遺族基礎年金や遺族厚生年金は、残された家族の生活保障のために、国から遺族に対して直接支給されるものです。
亡くなった人の財産ではないため、問題なく受け取れます。
③ 香典・弔慰金
- 香典: 葬儀の主宰者(喪主)や遺族に対する贈与(お見舞い)です。遺産ではないため受け取れます。
- 弔慰金: 勤務先から支給される場合、その趣旨が「遺族への慰謝料・生活保障」であれば受け取れます。ただし、金額が極端に高額で「実質的な退職金」とみなされる場合は注意が必要です。
【× 受け取れない】受け取るとアウトになる財産(要注意)
以下のお金を受け取り、自分のために消費してしまうと、「遺産を処分した」とみなされ、相続放棄ができなくなる(単純承認)可能性が極めて高いです。
① 被相続人の預貯金・タンス預金
たとえ数千円であっても、亡くなった方の財布や口座からお金を抜き取り、自分の生活費や遊興費に使うことはNGです。
② 所得税・住民税の還付金
亡くなった後に、役所や税務署から「還付金のお知らせ」が届くことがあります。
これは「被相続人が払いすぎていた税金を返してもらう権利(債権)」であり、立派な相続財産です。
通知が来ても、還付請求の手続きをしてはいけません。
③ 高額療養費の払い戻し
入院費などで支払った医療費が戻ってくる制度ですが、これも「被相続人の財産」です。
世帯主が受け取る形式であっても、被相続人にかかった医療費の還付であれば、遺産とみなされるリスクがあります。
【△ 判断が難しい】専門家の確認が必要なグレーゾーン
ケースバイケースで判断が分かれる、あるいは手続きに注意が必要な項目です。
① 未支給年金
年金は偶数月に「前2ヶ月分」が振り込まれます。そのため、亡くなった時点で必ず「まだ受け取っていない年金(未支給分)」が発生します。
- 国民年金・厚生年金・共済年金:
法律(国民年金法など)により、「生計を同じくしていた遺族」が自己の名前で請求できると定められています。この場合、相続財産ではなく遺族の固有の権利となるため、受け取れる可能性が高いです。 - 企業年金・個人年金:
契約内容や規約によります。「遺産」に含まれるケースもあるため、規約の確認が必須です。
② 死亡退職金
勤務先から支給される退職金です。
会社の就業規則(退職金規程)に、「死亡退職金は遺族(配偶者等)に支給する」と明記されていれば、受取人固有の財産として受け取れます。
しかし、規定がない場合や「被相続人に支給する」となっている場合は、遺産に含まれるため受け取れません。
誤って受け取ってしまった場合の対処法
「知らずに還付金の書類を書いて送ってしまった」
「口座からお金をおろして保管している」
もし誤った行動をとってしまった場合でも、「費消(使ってしまうこと)」していなければ、セーフになる余地があります。
手元に現金を保管しておき、相続財産管理人に引き渡すなどの対応をとれば、「処分」には当たらないと主張できるケースがあるからです。
最も危険なのは、「使ってしまった後に隠して相続放棄すること」です。これが発覚すると、詐欺的な行為として重い責任を問われます。
財産の受け取りに関するよくある質問(FAQ)
Q.生命保険金を受け取った場合、相続税はかかりますか?
A.かかる場合があります(みなし相続財産)。
民法上は「受取人固有の財産」として受け取っても相続放棄は可能ですが、税法上は「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。
Q.会社からの「死亡退職金」は受け取れますか?
A.会社の規定(就業規則)によります。
退職金規定で「受取人は配偶者」などと具体的に指定されていれば、受取人固有の権利として受け取れる(放棄に影響しない)可能性が高いです。
「これ、受け取っていい?」の判断は慎重に
事前にご相談いただければ、ご持参いただいた保険証券や通知書などの資料を拝見し、法的なリスク判定を行います。
安全に手続きを進めるために、まずは弁護士にご相談ください。
【受取可否を確認】無料相談予約 >
—–← 相続放棄の解説トップへ戻る


