【この記事の要点】
・自分で手続きすれば、実費(数千円程度)のみで相続放棄が可能です。
・最大の難関は「戸籍謄本」の収集。転籍が多いと数週間かかることもあります。
・書類不備や「放棄の理由」の書き方ミスで却下されると、再申請はできません。
「弁護士費用を節約したい」
「平日に休みが取れるので、自分でやってみたい」
相続放棄の手続きは、法律上、専門家を使わずにご自身(本人)で行うことが認められています。
特別な資格は必要ありませんが、役所での書類収集や裁判所とのやり取りをすべて自分で行う必要があります。
この記事では、自分で手続きを行う場合の具体的なステップ、費用、そして失敗しないための注意点を詳細に解説します。
専門家に依頼する場合の費用やメリットとの比較は、こちらの記事をご確認ください。
相続放棄の弁護士費用相場と依頼するメリット
自分でやる場合の費用と時間
専門家に依頼しない場合、かかる費用は実費のみです。費用の内訳(目安:3,000円〜5,000円)
- 収入印紙代: 800円(申述人1人につき)
- 連絡用郵便切手: 数百円〜1,000円程度(裁判所により異なります。東京家裁の場合は84円×4枚など)
- 戸籍取得費用:
- 戸籍謄本:1通 450円
- 除籍・改製原戸籍:1通 750円
- 住民票除票:1通 300円前後
- 定額小為替手数料(郵送請求の場合):1枚 100円〜200円
かかる時間の目安
- 書類収集: 1週間〜1ヶ月(本籍地が遠方の場合や、転籍が多い場合は時間がかかります)
- 書類作成: 数時間
- 裁判所の審査: 申立てから受理まで2週間〜1ヶ月程度
実践!手続きの4ステップ詳細
STEP 1:必要書類の収集(最難関)
最も手間がかかるのがこの工程です。被相続人との関係性によって必要な戸籍の量が異なります。
【基本セット(子が放棄する場合)】
- 被相続人の住民票除票(または戸籍附票):最後の住所地を証明するため
- 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本
- 申述人(あなた)の戸籍謄本
【難易度UP(兄弟姉妹が放棄する場合)】
親や祖父母がすでに亡くなっていることを証明する必要があるため、「被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍」や「両親の死亡記載のある戸籍」など、大量の書類が必要になります。
これらを本籍地の役所(場合によっては全国各地)から取り寄せる必要があります。
STEP 2:相続放棄申述書の作成
裁判所のWebサイトから書式(標準的な申立書)をダウンロードし、記入します。
【書き方のポイント】
- 「相続の開始を知った日」:
非常に重要です。ここが3ヶ月以内でなければ却下されます。死亡通知を受けた日などを正確に記載します。 - 「放棄の理由」:
選択肢(借金超過、生前贈与を受けている、生活が安定している等)に丸をつけます。
「その他」に理由を書く場合、「借金には関わりたくない」等、正直かつ簡潔に記載します。
STEP 3:家庭裁判所への提出
書類が揃ったら、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ提出します。
窓口への持参、または郵送でも可能です。郵送の場合は、書留などで送ることをお勧めします。STEP 4:照会書への回答と受理
書類に不備がなければ、1〜2週間後に裁判所から「照会書(質問状)」が届きます。
これは「勝手に名前を使われていないか」「本当に放棄の意思があるか」を確認するためのものです。
【照会書の質問例】
- 相続財産の中に不動産や預貯金があることを知っていますか?
- これまでに相続財産を処分(使用・売却)しましたか?
- 放棄することについて誰かに強要されていませんか?
これに回答して返送し、問題がなければ「相続放棄申述受理通知書」が届きます。これで手続きは完了です。
「自分でやる」場合のリスクと注意点
簡単そうに見えるかもしれませんが、以下の落とし穴に注意が必要です。
① 戸籍収集
「今の戸籍」を取るだけでは足りないケースが多々あります。
役所の窓口で「相続放棄に使いたいので必要なものを全部ください」と言っても、他市区町村の戸籍までは出してくれません。郵送請求を繰り返しているうちに、3ヶ月の期限が迫ってくる…というのがよくある失敗パターンです。
② 申述は1回のみであること
万が一、書類の不備や照会書への回答ミスで裁判所に「却下」された場合、再度の申述はできません。
即時抗告(不服申立て)はできますが、高等裁判所で決定を覆すのは極めて困難です。
③ 債権者への対応は自分でやる
被相続人に借金があり、債権者からの督促がすでに始まっている場合、相続放棄の手続き中も、債権者(貸金業者)からの督促は止まりません。「今、裁判所に申し立てています」と自分で説明し、待ってもらう必要があります。
手続きに関するよくある質問(FAQ)
Q.申述書に不備があった場合、訂正はできますか?
A.軽微なミスなら訂正可能です。
誤字脱字程度であれば、裁判所からの指示に従って訂正印などで修正できます。しかし、「放棄の理由」などの根本的な部分で、「やってはいけないこと(処分行為)」を自白してしまったり、矛盾する内容を書いたりして却下された場合、後からの修正や再度の申述はできません。
Q.途中から弁護士にお願いすることはできますか?
A.可能です。
「戸籍集めで行き詰まった」「裁判所からの照会書(質問状)の回答が怖い」といった段階で、弁護士に切り替えることは可能です。
もっとも、3か月以内に申述をしなければいけないことに変わりはないので、余裕をもってご相談ください。

