要点
- 遺留分侵害額請求は、遺留分が侵害されている場合に金銭の支払いを求める制度で、期間制限も問題になります(民法第1046条、民法第1048条)。
- 内容証明郵便は、主に請求の意思表示を「いつ・誰に・何を」伝えたか記録に残すために用いられる手段です。
- 文面や送付先の誤りが争点を増やす場合もあるため、事情に応じて慎重に対応することが大切です。
はじめに:内容証明は「対立を深めるため」ではなく「記録を整えるため」
遺留分の請求を考えたとき、「まず内容証明を送るべきか」「何を書けばいいのか」と迷われる方は少なくありません。
内容証明郵便は、相手を強く追い詰めるための手段というより、意思表示を記録として残し(権利を確保し)、交渉の土台を作る目的で使われることが多い方法です。ここでは一般的な位置づけ、書き方の考え方、注意点を整理します。
そもそも遺留分侵害額請求とは
遺留分侵害額請求は、遺言や生前贈与等により遺留分が侵害されている場合に、侵害している相手方に対し金銭の支払いを求めることができるという制度です(民法第1046条)。
また、請求には期間制限が問題になり得ます(民法第1048条)。
このため、内容証明の検討は「相手と争うため」ではなく、まずは
- 自分が遺留分権利者に当たるか(民法第1042条)
- 侵害があり得るか(民法第1046条)
- 期間制限との関係で急ぐ必要があるか(民法第1048条)
を整理するところから始まります。
内容証明郵便の役割:何のために送るのか
「意思表示をした事実」を残す
遺留分侵害額請求では、後になって「期限内に請求したか」が争点になり得ます(民法第1048条前段)。
そのため、内容証明郵便で請求の意思表示を行い、送付日・差出人・受取人・文書内容を記録として残すのが通常です。
交渉の入口を整える(冷静な話し合いのため)
内容証明を送ると、相手方が事態を把握し、代理人を立てるなどして、協議の土台が整うこともあります。
感情的なやり取りを避け、論点を整理して交渉を進めるという意味でも、「通知」の役割を果たす場合があります。
内容証明に書くこと
※以下は一般例です。実際には、把握できている資料・相手方との関係・期限の状況に応じて調整します。
誰が誰に送るのか(当事者の特定)
- 差出人(遺留分権利者)
- 受取人(遺留分を侵害していると考えられる相手方:受遺者、受贈者など)
受取人の特定を誤ると、後の手続きが複雑になることがあります。誰に請求すべきかは、遺言や贈与の内容により整理が必要です(民法第1046条)。
請求の趣旨(遺留分侵害額請求の意思表示)
「遺留分侵害額請求をする」という意思表示を明確にします(民法第1046条)。
具体的な金額まで確定できていない場合は、資料が揃ってから具体的な請求をするという前提で構いません。期限内に遺留分侵害額請求権を行使をする旨を最低限通知をして、権利を確保しておき、具体的な請求はその後落ち着いて行うようにするといった対応をすることが多いです。
前提事実(分かっている範囲で)
例:
- 被相続人の死亡日(相続開始)
- 遺言書の存在・概要(把握している範囲)
- 自分が相続人であること(戸籍で確認中でも可)
- 侵害があると考える理由(把握範囲で)
※断定的に相手方を非難するような内容を記載するのではなく、「現時点で把握している事実」と「確認したい事項」を淡々と書き分けるのが、争点を整理する意味でも、無用な対立を避けるという意味でも有効と考えられます。
協議・回答のお願い(回答期限、連絡方法)
- 一定の回答期限(過度に短くしない)
- 連絡方法(書面での回答希望、代理人宛の連絡希望等)
- 資料開示の依頼(財産目録、残高証明等)
回答期限は、相手方に不合理な圧力をかける趣旨にならないよう、状況に応じて設定します。
よくある注意点
期限との関係:「早く出す」だけでなく「どう残すか」
期間制限(民法第1048条前段)が問題になる場合、請求の意思表示をどのように記録に残すかが重要になります。
ただし、焦って不正確な前提で断定的に書くと、後の交渉や手続きで不利に働く場合もあり得ます。資料状況に応じて、文面の粒度を調整します。
受取人(相手方)を誤る・漏らす
遺留分侵害の原因が「遺贈」なのか「生前贈与」なのか等で、請求の相手方の整理が必要になります(民法第1046条)。 複数の相手が関係するケースでは、誰にどう請求するかが論点になり得ます。
感情的・攻撃的な表現は避ける
「だまされた」「横取り」等の表現は、相手方の反発を強め、交渉が難しくなることがあります。
遺留分は法律上の権利であり(民法第1042条、民法第1046条)、淡々と事実と請求の意思を記載する方が、結果として話し合いが進みやすい場合があります。
内容証明を送った後の流れ
- 相手方から回答(支払い可否、資料提示、反論等)
- 交渉(支払い方法・分割・代償金等)
- 合意書の作成(支払い条件、清算条項など)
- まとまらない場合は、調停・訴訟を検討
「送ったら終わり」ではなく、むしろ交渉の入口として、その後の進め方をセットで考えておくことが大切です。
- 関連記事:遺留分侵害額請求の進め方(全体フロー)
- 関連記事:遺留分の調停・訴訟の流れ
弁護士に依頼するメリット

内容証明は形式面の作業に見えますが、実際には
- 期限との関係(民法第1048条)
- 請求相手の整理(民法第1046条)
- 争点(贈与・評価)の見極め(民法第1043条、民法第1044条)
などが絡む分野です。
弁護士が関与することで、文面を整えるだけでなく、
- 通知後の交渉の段取りの設計
- 連絡窓口の一本化(精神的負担の軽減)
- 必要に応じた手続きへの移行
を一体で検討しやすくなる場合があります。
※事案により適切な進め方は異なり、特定の結果を保証するものではありません。
内容証明を送る前に、文面と進め方を整理したい方へ(初回相談無料)

内容証明は、遺留分請求の「記録化」と「交渉の入口」を整える手段として有用な場合があります。一方で、受取人の整理や、金額の前提、期限との関係など、文面設計が重要になることもあります(民法第1046条、民法第1048条など)。
当事務所では相続(遺留分を含む)のご相談を初回60分無料でお受けしています。
- 全国対応/来所・オンライン相談可(事前の本人確認等のお手続をお願いする場合があります)
- 東京駅徒歩約5分
- 電話受付:平日9:00~20:00
- 夕方以降のご相談も可能(予約制)
お問い合わせ:電話/問い合わせフォームよりご連絡ください。
よくある質問(内容証明)
Q1. 内容証明は必ず送らないといけませんか?
必ずしも「内容証明でなければならない」とは決まってはいませんが、後から期限内の意思表示(民法第1048条)が争点になり得ることもあるため、記録に残る形で意思表示を行う方法として(配達証明付きの)内容証明の形式で送付するのが通常です。
Q2. 金額がまだ分からないのですが、送って大丈夫ですか?
事情によります。遺留分の算定は、基礎財産や贈与の整理が必要となる場合があります(民法第1043条、民法第1044条)。把握できている範囲で意思表示を行い、資料開示を求めるなど、状況に応じて対応を検討する必要があります。
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