このページでわかること
- 相続で問題になる「使途不明金(説明がつかない出金)」の整理のしかた
- 預金の取引履歴(入出金明細)を軸にした、資料収集の進め方
- 相手方に説明を求めるときに対立を広げにくい工夫
- 交渉→遺産分割協議→調停の一般的な流れ
- 期間・費用の見通しを立てるために、先にやっておきたい準備
相続で「預金が減っている…」使途不明金を検討する場面

相続の手続を進める中で、「通帳を見たら預金残高が想像より少ない」「死亡直前に出金が続いている」「通帳やカードが特定の相続人の手元にある」といった疑問が生じることがあります。いわゆる「預金の使い込み」「使途不明金」と呼ばれる問題です。
ただし、出金があることだけで直ちに不正と決めつけられるとは限りません。介護費や医療費、生活費など、正当な支出の可能性もあります。一方で、資料が揃わないまま感情的なやり取りになると、説明が曖昧になったり、話し合いが長引いたりすることがあります。
このページでは、相続における使途不明金をめぐって、まず何を確認し、どの順番で整理していくとよいかを、交渉での解決を重視する視点から一般論としてまとめます。
使途不明金(説明がつかない出金)とは?最初に押さえる基本
相続の場面でいう「使途不明金」は、法律用語ではなく、実務上「被相続人の預金からの引出し・送金等について、後から十分な説明や資料が示されない状態」を指して使われることが多い表現です。
重要なのは、いきなり「違法かどうか」を断定するのではなく、次の“前提”を揃えることです。
- どの口座で、いつ頃、いくら動いたのか
- 通帳・キャッシュカード・暗証番号の管理状況(誰が管理していたか)
- 被相続人の生活状況(介護・入院・施設入所等)
この3点が見えるだけでも、相手方へ求める説明が具体化し、争点が整理されやすくなります。
詳しくは:相続の「預金の使い込み(使途不明金)」とは?定義とよくある誤解
よくあるケース(典型例)|同居・介護・判断能力低下期
使途不明金が問題になりやすいのは、たとえば次のような場面です。
同居の親族が通帳・カードを管理していた
本人が高齢で管理が難しくなり、同居家族が通帳やカードを預かることはあります。その一方で、後から「誰が、何のために、いくら出金したか」が見えにくくなることがあります。
介護費・生活費名目の出金が増えている(領収書が少ない)
介護や療養で支出が増えることは珍しくありません。ただ、領収書や請求書が残っていないと、相続人間で認識がズレやすくなります。
関連:介護費・生活費として説明される出金の見極め方(領収書がない場合も)
認知機能の低下が疑われる時期の出金
判断能力が低下していた可能性がある時期は、当時の生活状況や資料により評価が変わり得ます。まずは時系列と資料の所在を押さえることが重要です。
まずやるべきこと:預金の取引履歴(入出金明細)で事実を確認する

使途不明金の整理は、「疑い」を強めるためではなく、事実関係を客観的に把握し、説明が必要な取引を絞るために行います。そこで中心になるのが、金融機関の取引履歴(入出金明細)です。
取引履歴で把握しやすいのは、たとえば次のような内容です。
- ATM引出し(日時・金額など)
- 振込(相手先情報が分かる場合があります)
- 口座振替(施設費、保険料、公共料金など)
- 口座間移動(同一銀行内の資金移動等)
一方、現金引出しの「具体的な使い道」は履歴だけでは分からないので、領収書・請求書・介護記録など周辺資料と組み合わせて整合性を見ていくことが多いです。
詳しくは:
取引履歴を取ったら「分類」して争点を絞る
取引履歴を入手した後は、いきなり結論を出すのではなく、例えば次のように分類していくと整理しやすくなります。
- 施設費・保険料など固定的な引落
- 本人の生活に通常あり得る支出の可能性があるもの
- 高額・高頻度で説明が必要になりやすい出金
- 第三者への振込(目的確認が必要になりやすい)
- 口座間移動(移動先口座の確認が必要な場合)
相手方に説明を求めるときの注意点|対立を広げないために

使途不明金の場面では、相続人同士の言葉の行き違いが原因で、対立が深まりやすいことがあります。したがって、一般論としては、最初は次のような方針で進めるのが望ましいです。
- 「使い込み」と断定せず、特定の取引について確認したいという形にする
- 求めるのは「内訳」と「根拠資料」(領収書、請求書、介護記録等)
- 口頭だけでなく、メール・書面で記録化を意識する
必要に応じて内容証明郵便の送付を検討することもありますが、内容証明は万能ではありません。内容証明のような格式張った形式で送ること自体で、相手の不信感や警戒心を強めてしまう可能性がありますし、それに加えて、文面も強すぎたりすると交渉が硬直化することもあります。送付の適否や記載内容は慎重に検討する必要があります。
詳しくは:内容証明は必要?使途不明金の説明・資料開示を求める文書の注意点
解決までの一般的な流れ|交渉→遺産分割協議→調停

使途不明金の問題は、相続全体の解決(遺産分割)と絡むため、まずは資料を整え、交渉での着地点を探るという進め方が選ばれることも多いです。
Step1:資料収集(取引履歴+周辺資料)
- 取引履歴(入出金明細)の取得
- 時系列表(一覧表)の作成
- 介護・医療・施設費等の資料収集
Step2:相手方へ説明・資料提示を求める
- 対象取引を絞って確認する
- 説明の内容と資料の有無を一覧化する
Step3:遺産分割協議の中で調整する
遺産分割では、使途不明金を含めて「どこをどう清算・調整するか」を検討します。遺産分割の中で整理できる範囲と、別途の請求が問題になる範囲は事案により異なるため、資料を踏まえて方針を立てます。
Step4:まとまらない場合は調停を検討する
交渉で合意できない場合、家庭裁判所の手続(遺産分割調停等)を検討します。調停では、主張の強さよりも「資料」と「争点の絞り込み」が重要になりやすい傾向があります。
詳しくは:
返還請求(不当利得・不法行為など)が必要になることも
状況によっては、遺産分割とは別に、返還請求などの民事上の構成が検討されることがあります。ただし、どの構成が適切か、期間制限(時効等)の整理をどうするかは、事実関係や資料により変わり得ます。
そのため、一般論としては、まず遺産分割の枠組みで整理できる範囲を検討し、それでも解決が難しい場合に、別途の請求を含めた方針を検討することが多い分野です。
詳しくは:返還請求(不当利得・不法行為など)の考え方|相続で問題になる場面
弁護士に相談するメリット|追及する側の負担を軽くするために

使途不明金の問題は、資料収集、相手方との連絡、争点整理などが重なりやすく、精神的な負担が大きくなることがあります。弁護士に相談することで、例えば次のようなメリットが期待できる場合があります。
- 窓口を一本化し、相続人間の直接連絡の負担を軽くできる場合がある
- 取引履歴・周辺資料から、争点と優先順位を整理しやすくなる
- 遺産分割の中での着地点(清算方法・合意案)を見定めやすくなる
使途不明金の整理を急ぎたい方へ(無料相談のご案内)
「どの期間の履歴を取るべきか」「相手に何を求めるべきか」などの具体的対応は、手元資料ややりとりの状況などによって変わり得ます。迷う段階でも、早めに状況を整理しておくと選択肢を持ちやすくなる場合があります。
当事務所では初回60分無料で、現状をうかがいながらまず何を行えばよいかを一緒に確認します。
期間・費用の目安|見通しを立てるポイント
期間や費用は、資料の揃い具合、争点の数、手続(交渉/調停等)により変わり得ます。一般論としては、取引履歴の取得と時系列整理を早めに行うことで、見通しが立てやすくなる場合があります。
詳しくは:使途不明金の相談~解決までの期間と弁護士費用(一般的な目安)
ご相談について(全国対応・オンライン可)

当事務所では、相続に関するご相談を全国対応でお受けしています。使途不明金の問題は、資料の集め方や相手方への確認の仕方などで、話し合いの進み方も変わり得ます。現状整理の段階から、無理のない進め方を一緒に検討します。
- 初回相談料:無料(60分まで)
- 相談方法:来所/オンライン相談に対応(事前の本人確認等をお願いする場合があります)
- 所在地:東京駅から徒歩約5分
- 電話受付:平日 9:00~20:00
- 相談時間:夕方以降のご相談も可能(予約制)
- 他士業・専門業者との連携:税務・登記等が絡む場合、必要に応じて連携します
お問い合わせ(電話・フォーム)
- お電話:平日9:00~20:00
- 問い合わせフォーム:24時間受付(返信は営業時間内になる場合があります)
※個別具体的な見通しは、資料・経緯を確認したうえでの判断になります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 使途不明金がある=違法(使い込み)と考えてよいですか?
一般論として、出金があることだけで直ちに違法と断定できるものではありません。介護費・医療費・生活費など正当な支出の可能性もあります。取引履歴や周辺資料をもとに、説明が必要な取引を絞って整理することが重要です。
Q2. 通帳が見つかりません。取引履歴は取れますか?
一般論として、口座を特定できれば取引履歴の取得を検討できる場合がありますが、必要書類や取得範囲、手数料などは金融機関ごとに運用が違います。まずはどの金融機関に口座があったかを特定する作業が出発点になります。
Q3. 介護費に使ったと言われました。領収書がなくても説明は付くのでしょうか?
領収書が不足していても、施設費の請求書、介護サービス記録、医療費資料など周辺資料で整合性を検討できる場合があります。どの資料が手がかりになるかは事情により変わり得ます。
Q4. 相手が説明や資料提示に応じません。どう進めればよいですか?
交渉の中で記録化(メール・書面)を意識し、対象取引を絞って説明を求めることが、次の手続(遺産分割調停等)に進む場合にも役立つことがあります。進め方は資料状況や相続人関係により変わるため、早めに整理しておくことが有効な場合があります。
Q5. いつ相談するのがよいですか?
疑問のある出金に気づいた、取引履歴を取るべきか迷っている、相手方とのやり取りが負担になっている等、早い段階で相談することで選択肢を整理しやすくなることがあります。
まとめ:使途不明金は「資料」「争点の絞り込み」「交渉の進め方」が重要
- 使途不明金は、まず口座・時期・管理状況を資料で整理する
- 取引履歴と周辺資料で、説明が必要な取引を絞る
- 決めつけを避け、説明・資料提示を求める形で交渉を進める
- まとまらない場合は、遺産分割調停等も含めて方針を検討する
