要点
- 内容証明郵便は、「いつ・誰に・何を求めたか」を記録化する目的で用いられることがあります。
- 使途不明金の場面では、違法性を決めつける表現を避け、「特定の取引の説明・資料提示」を丁寧に求める形が無難です。
- 送付前に取引履歴を整理し、争点を絞っておくと、不要な対立を避けやすくなります。
そもそも内容証明郵便「は「何のため」に使うのか
相続で「預金の使い込み(使途不明金)」が疑われるとき、相手方に説明を求めても口頭だと話が噛み合わなかったり、後から「そんなことは言っていない」となってしまったりすることがあります。
内容証明郵便は、一般に次のような目的で用いられることがあります。
- 説明や資料提示を求めた事実を“記録”として残す
- こちらの求めている内容(対象口座・期間・取引)を明確にする
- 交渉の次の段階(遺産分割協議・調停等)に備え、争点を整理する
- 請求権の消滅時効が迫っているときに、時効の完成猶予を目的として行う
内容証明郵便は「送れば解決する」ものではありません。相手方の反応、資料の有無、相続人間の関係などにより、その後の進み方は変わり得ます。したがって、内容証明は交渉の道具の一つとして位置付け、主に、記録として残す必要があるかという観点から、内容証明で送るかどうかを検討する必要があります(説明を求めることに主眼があるのであれば、必ず内容証明で送らなければならないというものではありません)。
記載内容の検討:まず「対象取引」を絞る
文書で説明を求める場合、対象が曖昧だと、相手方は「何を説明すればよいか分からない」となりやすく、結果としてやり取りが長期化することがあります。
そのため、一般論としては、次のような作業を先に行うことが多いです。
- 取引履歴(入出金明細)を取得する
- 重要な期間(死亡前後、介護開始後など)を中心に時系列表を作る
- 「説明が必要な取引」をピックアップする(例:高額出金、頻繁な引出し、特定先への振込等)
この段取りを踏むことで、「抽象的な疑い」ではなく、具体的な取引についての確認として文書を作成しやすくなります。
関連:預金の取引履歴(入出金明細)の取り方
文書に書く内容(一般的な記載事項)
文面は事案ごとに調整が必要ですが、一般的には次の点を明確にします。
①対象口座・期間・取引
- 被相続人名義のどの口座か(金融機関・支店・口座番号等)
- どの期間の取引か
- どの取引の説明を求めているか(日時・金額・種別)
②求める内容は「説明」と「資料提示」に分ける
相手方に求める内容は、次のように分けると整理しやすいことがあります。
- 取引の目的(何に使ったか、誰のためか)
- 支出の根拠資料(領収書、請求書、介護費の記録等)
- 立替がある場合の清算状況(誰が負担したか等)
③回答期限・連絡方法(過度に強くしない)
回答期限を設けることはありますが、文面を強くしすぎると対立を深めることもあります。相手方との関係性や、現在の協議状況に応じて、無理のない期間設定を検討します。
④注意:時効の完成猶予を目的とする場合
なお、消滅時効の完成猶予を目的として内容証明郵便を送る場合には、文書の内容が、使途不明金の返還等についての具体的な「請求」となっていなければなりません。法的根拠や具体的な請求金額などをしっかりと特定した形で送付する必要がありますので、書き方もそのような観点を踏まえて調整する必要があります。
表現上の注意点:決めつけ・攻撃的表現を避ける
使途不明金の問題についての交渉では、「横領だ」「使い込んだに違いない」といった断定的表現は、交渉をこじらせたり、別のトラブルを招いたりするリスクがあります。
一般論として、文面では次のような点に配慮すると安全です。
- 「使い込み」と断定せず、“説明がつかない取引があるため確認したい”という整理にする
- 相手を非難するのではなく、資料に基づく確認に徹する
- 争点を広げず、対象取引を特定する
通知文書を送った後の流れ(一般的な見通し)
通知を送った後は、相手方の対応によりいくつかの分岐が考えられます。
- 相手方が資料を提示し、合理的な説明が付く
- 一部のみ提示され、残りは説明が不十分
- 応答がない/説明を拒否する
この場合、遺産分割協議の中で調整を試みるか、まとまらなければ家庭裁判所の手続(調停等)や地方裁判所での手続(返還請求訴訟等)を検討する流れになります。
関連:使途不明金が疑われるときの進め方
相談のタイミング

文書を出すタイミングや書き方は、相手方との関係や争点の内容によって適否が変わり得ます。送付前に取引の絞り込みや、表現の調整をしておくことで、不要な対立を避けやすくなる場合があります。
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