要点
- 使途不明金が疑われる場合でも、返還請求の法的構成(不当利得・不法行為等)は事実関係により変わり得ます。
- 構成によって、立証すべき点や期間制限(時効等)の整理が異なるため、資料に基づく慎重な検討が重要です。
- まずは遺産分割の中で整理できる範囲と、別途の請求が問題になる範囲を切り分け、優先順位を付けることが出発点になります。
返還請求が話題に上がるのはどんなときか
相続の場面で「預金の使い込み(使途不明金)」が疑われると、相続人の一部から「返してほしい」「返還請求をしたい」という意向が出ることがあります。
もっとも、相続の話し合い(遺産分割)で整理できる場合もあれば、事情によっては別途の請求を行うことになる場合もあります。例えば一般論として、次のような状況があると、別途の返還請求の検討が俎上に載ることがあります。
- 多額の出金があり、遺産として残っていない
- 相手方が説明や資料提示に応じない、あるいは説明が一貫しない
- 第三者への振込があり、目的が分からない
- 出金の時期・管理状況からみて、本人の意思による支出か疑問がある など
ただし、これらはあくまで“検討が必要になり得る場面”であり、実際にどの構成が適切かは、資料や具体的事情により変わります。
返還請求の「構成」が複数あり得る理由
返還請求というと一つの手続のように見えますが、相続の使途不明金をめぐっては、事実関係の捉え方により、複数の法的構成が問題になり得ます。典型例としては、以下のような整理が議論されることがあります(ここでは一般論としての説明に留めます)。
不当利得返還請求
ある取引に法律上の原因がないのに利益を得た、と整理できる場合に検討されます。使途不明金の場面では、「被相続人のための支出だった」「贈与だった」「立替だった」などの説明がどこまで合理的かが争点になり得ます。
不法行為に基づく損害賠償請求
故意・過失によって権利侵害があった、と整理できる場合に検討されます。もっとも、相続の場面では、そもそも何が権利侵害に当たるか、当時の管理状況・意思確認状況はどうだったか等、事実関係の検討が必要になります。
その他の整理が問題になることも
相続では、遺産分割との関係、相続人の地位、代理出金の経緯などが絡むため、見通しは事案ごとに変わり得ます。したがって、特定の構成を前提に結論を断定するのではなく、資料を揃えて事実関係を見極めどの整理が適切かを検討することが重要です。
返還請求を検討する場合に「立証面」で問題になりやすい点
返還請求を検討する局面では、一般論として、次のような点が争点になりやすい傾向があります。
①取引の特定(いつ・いくら・どの方法で)
まず、問題としている取引が客観資料で特定できているかが重要です。取引履歴(入出金明細)を取得し、時系列表で整理することが出発点になります。
関連:預金の取引履歴(入出金明細)の取り方
②使途(何に使ったか)と根拠資料
現金引出しは特に、履歴だけでは使途が分かりにくいことがあります。領収書がない場合でも、施設費・医療費・介護記録など周辺資料で整合性を検討できる場合があります。
関連:使途不明金の証拠チェックリスト
③管理状況(通帳・カードを誰が管理していたか)
本人が出金したのか、家族が代わりに出金したのか、どの時期から管理が移っていたのかなど、管理状況は評価に影響し得ます。事実の整理が不十分だと、議論が印象論に寄りやすくなります。
④当事者間の説明の経緯(記録化)
相手方に説明を求めた経緯、回答内容、資料提示の有無などを整理しておくと、争点の所在が明確になりやすいです。口頭でのやり取りだけでなく、メールや書面等で記録を残すことが有効な場合があります。
関連:説明・資料開示を求める文書の注意点
期間制限(時効等)にも注意が必要(一般論)
民事上の請求では、期間制限(消滅時効等)が問題になることがあります。もっとも、期間制限は
- どの法的構成を採るか
- いつから起算するか(いつ権利行使が可能になったといえるか等)
- 相手方の対応や資料の状況
といった事情により整理が変わり得ます。
本記事では詳細な説明は省略しますが、一般論として、**「期間制限が争点になり得るため、早めに事実関係と資料を整理して対応する必要な場合がある」**という点には留意してください。
まずは「遺産分割で整理できる範囲」との切り分けが重要
使途不明金の問題は、返還請求だけを単独で考えると、相続全体の解決(遺産分割)が進まなくなることがあります。一方で、遺産分割の中での調整で着地できる場合もあります。
一般論としては、次の順で整理すると見通しが立てやすくなることがあります。
- 取引履歴と周辺資料で、争点となる取引を絞る
- 交渉・遺産分割協議で調整できる範囲を検討する
- それでも解決が難しい場合に、別途の請求や手続を含めて方針を検討する
関連:使途不明金があると遺産分割はどうなる?
関連:使途不明金が疑われるときの進め方
相談のタイミング

返還請求を検討するかどうかは、取引の内容、資料の有無、相続人間の関係、遺産分割の進み具合によって判断が変わり得ます。早めに資料を揃え、争点と優先順位を整理しておくことで、無理のない方針を立てやすくなる場合があります。
当事務所では初回60分無料で、取引履歴や経緯をうかがいながら、遺産分割との関係も含めた進め方を一緒に確認します(全国対応/オンライン相談可※要事前本人確認/電話受付:平日9:00~20:00)。



