要点
- 調停では、主張の強さよりも「資料」と「時系列整理」が重要になります。
- 争点を広げすぎず、“説明が必要な取引”を絞って提示すると、手続が整理されやすくなります。
- 調停を見据える場合も、交渉段階から記録化と資料整理をしておくと移行がスムーズです。
遺産分割調停で「使途不明金」が争点になる場面
遺産分割協議で合意できない場合、家庭裁判所の遺産分割調停で解決を図ることが検討されます。使途不明金が絡むケースでは、相続人間で次の点が噛み合わず、調停で争点化しやすい傾向があります。
- 取引履歴の見方(何を疑問とするか)
- 介護費・生活費の説明の妥当性
- 資料がどこまで出ているか、出せるか
- どの範囲を遺産分割の中で調整するか
もっとも、調停での整理の仕方は事案により変わり得ます。使途不明金の問題は、相続人全員が遺産分割調停の中で解決をすることに合意ができない場合には、遺産分割の手続の中で取り扱うことができず、地方裁判所での訴訟手続を取る必要があるとされています。そのため、以下では、遺産分割の調停手続の中で取り扱う場合を前提とした一般論を説明します。基本的なポイントとしては、調停においては「資料と争点の整理が中心になる」という点をまず念頭に置いておくと見通しも立てやすくなります。
調停で重視されやすい資料(一般論)
取引履歴(入出金明細)と一覧表(時系列表)
使途不明金の議論では、まず取引履歴が土台になります。さらに、履歴をそのまま提出するだけでなく、
- 重要な期間を絞った一覧表
- 疑問点のある取引をピックアップした表
- 介護・入院等の生活イベントを併記した時系列
といった形で整理しておくと、争点が共有されやすくなる場合があります。
周辺資料(介護・施設・医療費等)
領収書が不足している場合も、施設費の請求書、介護記録、医療費の資料などで、一定の整合性を検討できることがあります。
管理状況に関する資料・メモ
通帳やカードの保管状況、同居・別居、施設入所の時期など、「誰が管理していたか」を示す事情は争点整理の材料になり得ます。
争点を「絞る」ことが大切な理由
調停では、すべての取引を争点化すると、資料の量も増え、議論が拡散しやすくなります。話が広がりすぎて話し合いが不可能と判断されてしまうと、遺産分割調停の中で使途不明金の話し合いは続けられなくなります。そのような観点からも議論の絞り込みが重要と言えます。
一般論としては、次のような観点で“説明が必要な取引”を絞り込みます。
- 金額が大きい取引
- 同種の取引が反復している(頻度が高い)取引
- 生活実態(介護費等)と結びつきにくい取引
- 振込先が第三者で、目的が不明な取引
この絞り込みができると、相手方に求める説明も具体化し、調停の進行も整理されやすくなります。
調停前にやっておくとよい準備(交渉段階からの積み上げ)
①説明依頼を「記録」として残す
口頭のやり取りだけだと、後から争点が曖昧になりがちです。メールや書面等で、対象取引を示して説明を求めた経緯を残しておくと、手続移行の際に整理しやすくなります。
関連:説明・資料開示を求める文書の注意点
②相手方の説明を一覧化する
相手方から説明があった場合、その内容(介護費、生活費、立替など)と根拠資料の有無を一覧にすると、争点の所在が明確になります。
③「遺産分割の着地点」も並行して考える
使途不明金だけを切り離して議論すると硬直化することがあります。他の遺産(残っている預金、不動産等)を含めて、遺産分割としての合意案を併せて検討することが有効な場合があります。
相談のタイミング
調停を視野に入れる場合、資料整理と争点の絞り込みが進んでいるほど、手続の見通しが立てやすくなることがあります。どの取引を争点にするか、どの資料を優先するかは事案により変わり得るため、早めに整理しておくことが有効なケースがあります。
当事務所では初回60分無料で、取引履歴・資料の状況を踏まえ、調停も見据えた進め方を一緒に確認します(全国対応/オンライン相談可※要事前本人確認/電話受付:平日9:00~20:00)。



