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家族信託の活用方法1(先祖代々の財産の円滑な承継に活用)

家族信託は、組み合わせ次第でさまざまな活用方法があります。皆様の家族にとって最適な、または課題に合った対策ができます。ここでは信託の具体的な活用方法について解説します。

【先祖代々の財産の円滑な承継に活用】

先祖代々の財産を後代に承継していくことは、さまざまな局面で重要となります。しかし、信託を活用することで、先祖代々引き継いできた財産を円滑に後代に遺していくことが可能となります。

<家業を長男家系が代々引き継いできたケース>

たとえば、家業を、代々、長男の家系で引き継いできた場合です。通常は、長男家系の名義で財産を承継してきていますので、仮に当代の長男が亡くなった場合、家業で利用する財産の多くが相続財産となります。万が一、相続人間で相続争いが生じた場合、家業に必要な財産が他の家系に散逸し、その結果、家業自体を存続していくことが不可能となる、という事態が生じ得るのです。

また、株式会社化をして、家業の財産を法人名義のものとしていた場合、家業の財産を守ることはできますが、会社の経営権を意味する自社株式は相続の対象となります。その結果、これまで経営に全く関与してこなかった他の家系の者が、自社株式を相続することで、経営に口を出してくる、という事態も生じ得るのです。

この事例のように、家業を長男の家系で引き継いでいく場合について、信託の利用が考えられます。例えば、委託者である当代が、家業を管理する法人などを受託者として、家業で利用する財産を信託財産として信託します。そして、受益者として、当初は現在家業を営む当代を指定しておき、当代が亡くなったときには、第2受益者として当代の長男、第3受益者として当代の孫(長男)を指定しておくことで、当代が亡くなった後も、長男の家系で家業を引き継いでいくことが可能となります。

<歴史的価値のある建造物の承継>

他方で、少し視点を変えてみたときに、歴史的価値のある建造物を、自分の死後も後代に残していきたい、という場合もあります。

歴史的建造物の保存については、これまで、地方公共団体や公益団体に寄付をしたり、景観重要建造物などに指定してもらう、などの対策も考えられました。しかし、寄付をするといっても、歴史的価値はあるものの寄付する時点では収益が見込めないような不動産の場合、寄付を受ける側からすれば、固定資産税等の経済的負担がかかるだけで保存・維持していくことも難しいため、寄付自体を断られるケースが散見されます。また、景観重要建造物などに指定されると、自然崩壊などのやむを得ない事情がなければ、未来永劫建造物を改変することができなくなってしまうため、逆に当該建造物を活用しづらい、という問題もありました。

そこで、この事例のように歴史的建造物を後代に遺していく場合についても信託の利用が考えられます。例えば、委託者である当該建造物の所有者が、公益法人などを設立して受託者とし、当該建造物を信託財産として信託します。この法人において、歴史的建造物を保存、維持していくとともに、この建造物を利用した収益事業や地域に貢献する事業を展開していくことで当該建造物の保存・維持費に充てる、といったことが可能となります。

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