家族信託の特徴・メリット①【凍結防止効果】
信託の効果・メリット
家族信託には、様々な性質・特長があります。ここでは、信託という制度の有する性質によって、どのようなメリットを得られるのかについて説明します。 信託がもたらす最大の効果は、財産の凍結を防止する、という点にあります。
認知症などで判断能力を失ってしまった場合
財産を所有する人には、当然に、その財産を処分したり、運用したりする権利が認められています。これは、財産を所有する人が、自らの意思に基づいて、処分や運用といった行為を行うことで、法律が、その行為の効力を認めているのです。このような行為は、「法律行為」と呼ばれます。
ところが、この人が認知症等によって判断能力を失ってしまった場合、事態は一変します。「法律行為」は、その行為をする人が、十分な判断能力を備えた上で、自らの意思に基づいて行為を行っていることを前提としています。しかしながら、認知症等によって判断能力を失ってしまうと、たとえその人が、財産を処分したり、運用したりしたとしても、その行為は「自らの意思に基づいて行っている」とは言えないことから、処分や運用といった効力が認められなくなってしまうのです。
たとえば、不動産や株式を所有する人が、認知症になってしまった場合、その不動産を売却したり、株式を運用することができなくなってしまいます。また、不動産の修繕が必要になったり、誰かに賃貸したいと思ったときも、修繕や賃貸に必要な契約をすることができなくなってしまうのです。
もちろん、判断能力が低下してしまうと何もできないとなっては、その人自身の生活を守ることができなくなってしまいます。そのため、家庭裁判所に申立てをして、この人に代わって判断する権限を付与された成年後見人や保佐人、補助人といった方を選任してもらうことは可能です。しかし、これらの人たちの役割は、「その人自身の生活を守ること」ですので、その範囲を超えて、不動産を売却したり、株式を運用したりすることまでは認められていません。その結果、財産が凍結してしまうのです。
信託を利用した財産凍結の防止
これに対して、信託を利用すると、このような財産が凍結する事態を防ぐことができます。信託は、財産を所有する人が元気なうちに、財産の管理や運用、処分といった権限を、信頼できる受託者に託しながら、そこから得られる利益は、引き続きその人が享受するという仕組みを作ることが可能です。そのため、仮に、財産を所有する人が、認知症等になって判断能力が低下してしまったとしても、財産を託された受託者は、その人の利益のために、引き続き、財産を管理、運用、処分することができるのです。
このように、信託は、現在の後見制度では実現することのできない、財産が凍結してしまうという事態を防ぐ効果を有しているのです。