Columnコラム

相続財産清算人(相続財産管理人)とは?どのようなケースで必要?

1.「相続財産清算人(相続財産管理人)」とは

⑴ 被相続人が亡くなり、相続が開始した後の遺産の管理は、相続人や遺言によって財産を承継した受遺者によって行われるのが通常です。しかし、相続人がいなかったり、いても全員が相続放棄をすると、相続財産を適切に管理する人がいなくなります。このような場合に、相続財産を管理して清算する役割を担う者として、「相続財産清算人」が選任されます。

なお、令和5年4月1日に施行された改正民法により、従来の「相続財産管理人」が「相続財産清算人」へと名称変更され、選任の流れについても一部変更されています。以下では、この「相続財産清算人」についてご紹介します。

⑵ 相続財産清算人は、家庭裁判所に請求して選任してもらいます。これを請求するためには、次の3つの要件を満たす必要があります。

 ① 利害関係人であること

相続財産清算人を選任して管理・清算を行ってもらうことについて、法律上の利害関係があることが必要です。たとえば、被相続人に債権を有している債権者などがこれに当てはまります。

 ② 遺産があること

遺産がほとんどなければ清算する意味はなく、相続財産清算人を選任しても費用倒れになってしまうからです。

 ③ 相続人の有無が明らかでないこと

相続人がいることが判明している場合は、相続財産清算人を選任する必要はないからです。

 

2.相続財産清算人の選任が必要なケース

⑴ 相続財産があり、かつ、相続人がいない場合や、相続人がいても全員が相続放棄する場合は、相続財産を管理する人がいなくなります。そうすると、被相続人に対して債権を持っている人は、債権の回収ができなくなってしまうため、家庭裁判所に相続財産清算人を選任してもらう必要が生じます。

なお、民法では、相続放棄をしても「その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。」(民法940条1項)と定められています。そして、たとえ相続放棄をしたとしても、次に相続人となる者がいない場合、相続財産清算人が管理を始めるまでは、法定相続人が、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産の管理をしなければなりません。そのため、最後に相続放棄を行い、かつ、その後も相続財産の管理を行っている者は、利害関係人として相続財産清算人選任の申立てができると解されています。

⑵ もっとも、相続財産があり、かつ、相続人がいなかったとしても、遺言が存在し、かつ、遺言執行者が指定されている場合は、遺言執行者によって遺言が執行されるため、受遺者が遺贈を受けるために相続財産清算人の選任を申し立てる必要はありません。また、遺言は存在するものの、遺言執行者が指定されていない場合も、受遺者は、家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てることで遺贈を受けることができるため、相続財産清算人の選任を申し立てる必要はありません。

ただし、いずれの場合も、相続債務の支払について遺言に記載がなく、相続債務の支払をすべき相続人も包括受遺者もいないときは、相続債権者は、相続債務の支払を受けるために相続財産清算人の選任を申し立て、相続債権の請求の申出を行って支払を受ける必要があります。

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