相続税申告の書類が届いたら、対応すべきこと
税務署から送付される2種類の書類
市町村長等は、死亡届を受け取ると、所轄の税務署長に通知することになっています。通知を受けた税務署は、KSKシステム(国税総合管理システム)というデータベースで、亡くなった方の保有財産や所得の状況などに関する情報を管理しています。そして、相続税がかかる可能性があると判断した方には、「相続税についてのお知らせ」または「相続税の申告書についてのご案内」という2種類の書類を送ります。
したがって、相続人は、被相続人が亡くなってから半年ほどが経過すると、税務署からこのいずれからの書類を受け取る可能性があります。
この2つの書類は、緊急度に違いがあります。「相続税についてのお知らせ」は、相続税がかかる可能性のある方に対する周知の意味合いを持ちます。
これに対して、「相続税の申告書についてのご案内」は、被相続人の保有財産や所得などから相続税がかかる可能性が高い方に対して送られています。すなわち、「相続税の申告書についてのご案内」は、周知を超えて、相続税の申告または相続税の申告要否検討表を提出するよう求められているのです。
相続税の申告が必要なケース・不要なケース
相続税は、全ての相続において課されるわけではありません。
遺産総額(相続や遺贈、相続時精算課税の適用を受ける贈与によって財産を取得した人ごとにその価額を計算し、それを合計した額)から、法が定める基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引いた額が、課税される遺産の総額(課税遺産総額)とされます。
これがプラスになるときは、相続税の申告が必要となりますが、これがゼロまたはマイナスになる場合は、課税対象となる財産がないため相続税はかからず、相続税の申告をする必要もありません。
相続税の申告期限と納付期限
相続税の申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内にしなければなりません。また、納付(納税)の期限も同じです。
相続人は、たいていの場合、被相続人が死亡したことを知れば相続の開始があったことを知ったといえますから、特別な事情がない限り、死亡した日の翌日から10ヶ月と考えておけばよいでしょう。
上記の期限内に、相続税を申告しなかったときや、申告は済ませたものの相続税を納付することができなかったときは、本来納付すべき相続税に加えて、延滞税や加算税を課されることがあります。
また、単に期限を経過してしまった場合であれば、刑罰は科されず、延滞税や加算税を納付するだけで終わりますが、偽りその他の不正の行為や申告書を提出期限までに提出しないことにより、相続税を免れた場合は、悪質として刑罰が科されるおそれがあります。
相続税を申告する方法
上記2のとおり、相続税の申告が必要かどうかは、各人が相続などによって取得する価額の合計額から基礎控除額を差し引いた額がプラスになるかどうかで決まります。したがって、相続税を申告するには、以下の⑴から⑷の手順で進めていきます。
(1)法定相続人の調査・確定
法定相続人を確定させるためには、被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本等(改製原戸籍、除籍謄本)を取り寄せ、第1順位の相続人となる子がいるかどうかを確認します。子がいない場合は直系尊属が、直系尊属がいない場合は兄弟姉妹が、それぞれ相続人になるため、被相続人の父母や兄弟姉妹の戸籍等も順次取り寄せる必要があります。
(2)相続財産の調査・確定
相続財産には、現金・預貯金のほか、土地や建物などの不動産、株式や国債などの有価証券、自動車、骨とう品や貴金属などの動産等があります。また、プラスの財産からマイナスの財産や葬儀費用を差し引くことができるので、これらも調査する必要があります。
(3)遺産分割協議
法定相続人と相続財産が確定すれば、法定相続人間で遺産分割協議をし、合意できれば遺産分割協議書を作成します。期限内に遺産分割協議がまとまらなければ、10ヶ月以内にいったん法定相続分による申告、納税を行い、遺産分割協議が成立した後に修正申告、更正の請求を行うことになります。
(4)「相続税の申告書」の作成
期限内に申告書を作成し、所轄の税務署に提出します。申告書の様式や作成方法は、国税庁のHPで入手することができます。
相続税の申告は個人でもできますが、必要書類の準備や手続が大変で時間がかかりますし、配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例などの細かいルールが多数存在し、専門的な知識も必要となるため、税理士に相談するとよいでしょう。