特別受益で受けた財産も遺留分侵害額請求の対象となるか?

配偶者や両親が亡くなって相続問題が発生した際、例えば特定の相続人にのみ全財産を相続させる旨の遺言書が見つかったとします。そのような場合、何も相続できない相続人にも、最小限得られる利益として、「遺留分」というものがあることは、知っている方もいるかと思います。

では、この遺留分の計算はどのようにしたらよいのでしょうか?特に、生前に被相続人から特別受益を受けた相続人がいる場合には、この特別受益は遺留分の計算に含まれるのでしょうか?

遺留分の計算方法

遺留分は、まず、相続人が誰であるかによって全体の遺留分が決まります。直系尊属のみが相続人である場合には3分の1、それ以外の場合は2分の1が乗じられ、全体の遺留分が決まります。これに、相続人各自の法定相続分を掛けることで、各相続人の遺留分が定まります。

例えば、夫(父)が亡くなり、相続人が妻(母)、長男、二男の計3人の場合、妻の遺留分は4分の1(1/2×1/2)、それぞれの子どもの遺留分は8分の1(1/2×1/4)ということになります。

特別受益は遺留分の基礎となる財産に含まれるか

では、遺留分の基礎となる財産はどのように計算すればよいのでしょうか。

まず、亡くなった時に存在する被相続人の資産と負債は、遺留分算定の基礎となる財産に含まれます。

次に、相続開始前の1年間になされた贈与は、遺留分算定の基礎となる財産に含まれます(民法1044条前段)。例えば、上記の例でいうと、夫が亡くなる半年前に、今後の生活のために亡夫が妻に対して1000万円を贈与していたような場合には、かかる1000万円は、遺留分算定の基礎となる財産に加算されることになります。

また、特別受益にあたる贈与についても、相続開始前の10年間になされたものに限り、遺留分の算定の基礎となる相続財産に含まれることになります。

特別受益にあたる贈与とは、婚姻もしくは養子縁組のため、又は生活の資本として受けた贈与のことをいいます。例えば、上記の例でいうと、長男が住宅を購入するにあたって、住宅購入資金として亡父が長男に対して500万円を援助したような場合には、特別受益にあたり、遺留分の算定の基礎となる相続財産に加算されることになります。

ここでのポイントは、贈与の場合も特別受益の場合も、利益を得た相続人は、例えば1000万円や500万円を遺産に戻す必要はなく、あくまで、遺留分額を計算するために加算するにすぎないということです。それなので、遺留分侵害額請求を受けた場合に、相続した財産又は生前に利益を受けた財産以上に損をするということはありません。

まとめ

以上のとおり、特別受益についても、相続開始前の10年間になされたものについては、遺留分算定の基礎になる財産に含まれることになります。しかし、何が特別受益にあたるかは難しい判断で、相続の争いでもよく問題になるところです。

遺留分侵害額請求をする、又は請求された際に、特別受益が問題になる場合には、早めに弁護士の相談するのがよいでしょう。

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