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遺産相続手続の期限とは

遺産相続の手続きに期限があることはご存知でしょうか。

身近な方が亡くなると、相続に関する様々な手続が発生します。のんびりやっていればいいかな、早く済ませないと期限があるのかもしれない、そんな風に悩まれていませんか?

死亡届、火葬許可申請書の提出は7日以内、相続税の申告・納付は10か月以内など、項目によって手続きの期限が異なります。

ここではこのうち、期限のあるものとないものについて解説いたします。

1.期限のある手続

期限のある手続の起算点は、基本的には、自分のために相続があったと知った日から、すなわち、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から起算することがほとんどです。

 

 ⑴ 死亡届、火葬許可申請書の提出【7日以内】

人が死亡すると、医師から、死亡届とセットになった「死亡診断書」又は「死体検案書」を交付されます。死亡届に必要事項を記入して、被相続人の死亡を知った日から7日以内に市区町村役場へ持参し、死亡届を提出します。このとき、被相続人の戸籍も書き換えてもらえます。

死亡届を提出する際、同時に火葬許可申請書を提出すると、役所から死体埋葬火葬許可証をもらえます。これがあれば火葬することができます。

 ⑵ 国民年金受給停止、健康保険資格喪失、世帯主の名義変更【14日以内】

被相続人が年金を受け取っていた場合、国民年金は死後14日以内に、厚生年金は死後10日以内に、それぞれ年金事務所に「受給権者死亡届」を提出し、年金の受給を止めてもらいます。死亡を報告せずに年金を受け取ってしまった場合、後で返還しなければならず、「不正受給」とされる可能性もあります。

また、健康保険や介護保険は資格喪失の手続が必要となるため、国民健康保険は市区町村役場に、社会保険は加入している健康保険組合に、それぞれ連絡して書類を提出します。また、社会保険の被保険者が死亡すると、被扶養者は健康保険組合から「埋葬料」をもらえるので、忘れずに申請しましょう。

被相続人が住民票上の「世帯主」だった場合は、役所で世帯主の変更届も提出します。

 ⑶ 相続放棄、限定承認【3か月以内】

被相続人の相続人を確定し、相続財産の調査が終わると、相続人は、①単純承認、②相続放棄、③限定承認の3つの中から、相続方法を選択します。

「単純承認」は、相続財産のうちプラスもマイナスも含めて全てそのまま相続することをいいます。「相続放棄」とは、相続財産を一切承継しないことをいいます。限定承認は、相続財産の範囲で負債を相続することをいいます。相続財産のうち、資産から負債を差し引いて残りがあれば相続しますが、残らなければ相続しません。

相続放棄をするためには、家庭裁判所で「相続放棄の申述」を、限定承認をするためには、家庭裁判所で「限定承認の申述」を、それぞれ被相続人の死後3か月以内に行う必要があり、この期間内にいずれの手続もしなければ、自動的に単純承認をしたことになります。ただし、家庭裁判所で「熟慮期間延長の申立」という手続をすれば、3か月経過後であっても、相続放棄や限定承認が認められる可能性があります。

 ⑷ 準確定申告【4か月以内】

準確定申告とは、所得のある被相続人が死亡した場合、被相続人の代わりに相続人が行わなければならない確定申告のことです。この期限を過ぎると、延滞税が発生します。

準確定申告をしなければならないケースとしては、被相続人が、生前に事業を営んでいて確定申告していた場合や、副収入があったり2000万円以上の給与を受け取っていて確定申告の義務があった場合、確定申告によって還付金を受けられる場合などが挙げられます。

 ⑸ 相続税の申告・納付【10か月以内】

相続税の申告と納付は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。相続税の対象となる金額は、平成25年より、【3,000万円+(相続人の人数)×600万円】の基礎控除が設定され、この基礎控除を上回る場合は相続税の申告が必要になりました。この期限を過ぎると、遅延日数に応じた延滞税(利子税)がかかるほか、税務署からも督促を受け、最終的に財産を差し押さえられるリスクもあります。

なお、相続税を払いすぎた場合には、税務署へ申告して還付を受けられます。相続税の還付請求の期限は、相続税の納付期限後5年間、つまり、相続開始を知った日の翌日から5年10か月以内が、還付請求の期限となります。

 ⑹ 遺留分侵害額請求【1年以内】

遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人が最低限受け取ることのできる遺産の割合です。遺言や生前贈与等によって遺留分を侵害されると、侵害された相続人は、侵害者に対し、「相続開始と遺留分侵害の事実」を知ってから1年以内に「遺留分侵害額請求」をすることができます。この遺留分侵害額請求権は、「相続開始から10年」が経過したときにも消滅します。

遺留分侵害額請求をするときには、侵害者に対し、1年以内に内容証明郵便で「遺留分侵害額請求書」を送れば、この権利を守ることができます。

 ⑺ 死亡一時金の受取請求【2年以内】

死亡一時金とは、第1号被保険者が老齢基礎年金や障害基礎年金を受給しないまま死亡した場合に、被保険者と生計を同一にしていた遺族へ給付されるもので、被保険者の死亡後2年以内に請求しなければなりません。これを受け取るには、年金を36か月以上納めていなければなりません。死亡保険金として支払われる額は、保険料を納めた期間によって変わりますが、12万円~32万円となっています。

 ⑻ 生命保険金の請求・相続税の軽減の特例【3年以内】

被相続人が生命保険に加入していた場合、指定された受取人は、死亡保険金を受け取ることができますが、保険金請求権には3年の時効期間があります。

また、相続税の軽減の特例も、3年以内に遺産分割が終われば、あとから適用を受けることができます。たとえば、以下の特例が挙げられます。

・配偶者の相続税軽減

配偶者が相続した遺産のうち、【1億6,000万円】あるいは【法定相続分】までの金額には、相続税の納付が免除される特例

・小規模住宅地の課税価格の特例

被相続人が事業又は居住用として使っていた宅地のうち、その分類に応じた一定の面積までは、事業の継続として使う場合や住み続ける場合など一定の条件を満たせば、最大80%の土地評価額の減額評価してくれる特例

・農地等の相続税の課税特例(納税猶予)

相続した遺産のなかに農地が含まれていた場合、相続人が農業経営を引き継ぐなら、相続税の納付が猶予され、一定の条件が満たされた場合には、納税が免除される特例

 

2.期限のない手続

 ⑴ 遺言書の検認

遺言書の検認そのものに期限がありませんが、検認をしないままだと不動産の相続登記や預貯金の払戻しなどができません。検認には1か月程度かかります。

 ⑵ 遺産分割協議・調停・審判

遺産分割協議や調停、審判にも期限はありませんが、これらが解決しないといつまで経っても不動産の相続登記や預貯金の払戻しといった相続手続を進めることができません。また、相続税の各種控除も適用できず、相続税額が上がってしまう可能性もあります。

なお、2022(令和3)年の民法改正で被相続人が亡くなってから10年以内に遺産分割をしないと、法定相続分と異なる相続分の主張が制限されることになりました。2024(令和5)年4月から改正法が施行されますので、いわゆる特別受益や寄与分を主張したいと考えている方は、早く遺産分割を進めないとそれができなくなる可能性がありますので注意が必要です。

 ⑶ 預貯金口座などの名義変更

被相続人の預貯金口座の名義変更や預金の解約・払戻しにも、法定の期限はありません。ただし、5年以上放置すると時効にかかる可能性があるほか、10年が経過すると「休眠預金」扱いとなって公益活動に預金が流用されてしまうリスクもあります。

 ⑷ 不動産の相続登記

2023年現在では期限がありませんが、2024年4月からは、それ以前に相続した人も含めて、自分が相続や遺贈によって不動産を取得したことを知ってから3年以内に相続登記をしなければならなくなりました。この期限を過ぎると、過料のペナルティが課される可能性もあります。

⑸ 公共料金等の名義変更

被相続人が公共料金等の契約者だった場合、期限は特にありませんが、電力会社やガス会社へ連絡して名義変更しましょう。

このように相続の手続きには期限のあるもの、ないものがあります。ご親族の不幸ということで、大変な時期ではございますが、期限だけは注意をするようにしてください。

また、ご自身が何から手を着けたらいいのかが分からない、などございましたらお気軽にご相談ください。

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