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遺産分割はやり直しできる?

遺産分割のやり直しはできる?

遺産分割協議が成立すると、原則として「やり直し」はできません。

一度相続人全員が合意して有効に遺産分割協議を成立させた以上、そう簡単にその内容を覆せるようでは、法的安定性が保たれないからです。

遺産分割のやり直しが認められるケース

ただし、例外的に遺産分割協議のやり直しが認められるケースがあります。

それは、相続人全員が「遺産分割のやり直し」に納得して同意した場合です。そもそも遺産分割協議は相続人全員の合意に基づいて成立しているものであるため、全員がその内容を変更することに同意するのであれば、やり直しても特に問題はないということになります。

また、最初の遺産分割協議に問題があった場合にも、やり直しが必要となることがあります。具体的には、以下のような場合です。

 ⑴ 遺産分割協議を取り消せる場合

遺産分割協議の際に、脅されたり騙されたりしたという事情があれば、合意の取消しが可能です。例えば、他の相続人やその相続人の依頼を受けた第三者から脅迫を受けて、無理やり遺産分割協議書に署名押印させられたような場合や、一部の相続人が財産隠しを行っていたことが後から発覚したような場合が想定されます。

また、遺産分割協議の前提に重大な勘違い(錯誤)があった場合にも、取り消すことが可能です。実は一部の相続人に高額の生前贈与が行われていたにもかかわらず、その事実を認識せずに遺産分割協議書に署名押印し、後からその事実を知ったような場合が想定されます。

遺産分割協議が取り消されれば、最初に行われた遺産分割協議の効力は失われることになりますので、遺産分割協議のやり直しが必要となります。

なお、取消権は、追認(取り消すことができることを知った上で、その効果を事後的に承認すること)することができる時から5年で時効となりますので、この点はご注意ください。

 

 ⑵ 遺産分割協議が無効な場合

遺産分割が無効であれば、そもそも遺産分割協議が成立していないことになるため、物理的にやり直しをする必要があります。

遺産分割協議には、相続人全員の参加が必要になりますので、1人でも参加していなかったら、遺産分割協議は無効になります。また、認知症が進行して意思能力を欠いた相続人が成年後見人を選任せずに遺産分割協議に参加していた場合、親と未成年の子どもが同時に相続人になった場合で未成年の子どもが特別代理人を選任せずに遺産分割協議に参加していた場合にも、遺産分割協議は無効になります。

 

遺産分割をやり直す場合の注意点

遺産分割をやり直すといっても、完全に元の状態からやり直せるとは限りません。例えば、最初の遺産分割の際に不動産を相続した相続人が、再協議の前に当該不動産を第三者に売却して登記を移転していれば、当該第三者に返還を求めることはできません。詐欺や強迫によって最初の遺産分割を取り消す場合でも、相続人から遺産を取得した第三者が詐欺や強迫といった事情を知らない場合には、当該第三者に遺産の返還を求めることはできません。

また、遺産分割をやり直す場合には、さらなる税負担が発生する可能性があります。遺産分割をやり直す場合でも、最初の遺産分割に基づいて納付した相続税は返還されません。その上で、再協議によって財産が移動すれば、税務上は「贈与」とみなされ、贈与税が発生してしまいます。再協議によって不動産の相続人を変更するような場合には、登記に係る費用や不動産取得税も別途発生することになります。

このように、遺産分割をやり直す場合には、完全なやり直しができない恐れがある上に、やり直すとしても多額の税負担が追加で発生する可能性があります。

 

まとめ

一度成立した遺産分割のやり直しができる場面は限られていますし、やり直すとしても追加の税負担が生じるなどの不利益を被る恐れがあります。また、やり直しを主張することで他の相続人とのトラブルに発展してしまう恐れもあります。

遺産分割のやり直しをすべきかどうかでお悩みの方は、一度弁護士に相談することをおすすめいたします。

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