内縁の妻が相続をする2つの方法と注意点

内縁の妻は「相続人」になれるか?

結論から申し上げると、現在の判例・通説では、内縁関係の場合、相続権が認められていません。

民法では、亡くなった方の「配偶者」は常に相続人となると規定されています。内縁とは、実質的には生計を共にする夫婦と同じ生活実態であるものの、婚姻届を提出していない状態です。配偶者と内縁とでは、要は婚姻届を提出しているかいないかの差しかないのですが、これが大きな差となってしまうのが相続の場面なのです。

内縁の妻が遺産を取得する方法

上記のとおり、何も対策を取らないと、内縁の妻には相続権がないために、内縁の夫が亡くなった際、何も遺産をもらえないこととなってしまいます。ともに一定の収入・資産があり、それでも困らないというケースであればよいのですが、内縁の夫に扶養してもらっていたような場合には、内縁の夫の死亡によって、経済的に困窮してしまうことになります。

そこで、内縁の妻が遺産を取得する方法として代表的なものに触れていきます。

まず、もっともシンプルなのは内縁の夫が遺言を作っておき、遺言によって遺産を渡す方法です。この方法が最も確実かつわかりやすいので、まだ遺言を作っていない内縁のパートナーがいる方は、すぐにでも作成を検討することをおすすめします。

次に、生前贈与を活用する方法があります。これは、生きている間に非課税枠を利用しつつ、少しずつ財産を移転させておく方法になります。生きている間に行うため、それぞれの意思に基づいて財産の移転を行えるという点では都合が良いです。他方で課税枠との兼ね合いで移転に長期間を要することや、「生きているうちは自分で持っておきたい」という財産がある場合には適用できないのが難点です。

他には、生命保険をかけておくという方法もあります。死亡保険金のあるタイプの生命保険に加入し、死亡保険金の受取人を内縁の妻に指定しておくのです。なお、内縁のパートナーを受取人に指定することができるのが一般的ですが、加入する保険会社の条件を満たす必要がありますので、実際に加入する保険の内容を精査する必要があります。

内縁の妻が財産を取得したときに想定されるトラブル

前述の「遺言」又は「生前贈与」によって内縁の妻が財産を取得した場合、相続人から遺留分侵害額請求をされる可能性があります。遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に認められているもので、子・配偶者であれば法定相続分の2分の1、直系尊属であれば法定相続分の3分の1などと、最低限取得できる遺産の額が決まっています。誰かが遺産を取得したことで、遺留分額を下回る分しか取得できなかったときに、遺留分を有する人は、侵害されている金額を、侵害している人に請求できるのです。

なお、実は前述の「死亡保険金を受け取る」という方法の場合には、この遺留分侵害額請求の問題は生じません。というのも、死亡保険金はあくまでも保険会社が契約に基づいて支払うものなので、相続財産ではないからです。

対策はお早目に

内縁関係の場合、相続の場面では法律婚に比べて、パートナーがかなり弱い立場に追いやられてしまうことになります。そのため、自分の死後もパートナーを守るためには、どのような方法をとるのがベストか、考えておくことを強くお勧めします。

相続でお困りの方は専門家にご相談を

内縁関係の方に遺産を相続させる場合は、遺言書作成や生前贈与のような「生前対策」が必要となります。残される全ての人のためにも、生きているうちに、相続対策をしておくことが大切です。相続にご不安を感じている方は、お気軽に弊所にご相談ください。

弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所は2009年創業。当事務所では民事事件を主に取り扱っており、相続に関するご相談には経験豊富な弁護士2名体制でお客様をサポート致します。不動産が絡む相続問題に強みがあり、ご相談だけでなく売却等のお手伝いもしているのが特徴です。

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