相続財産が不動産か動産かで適用される法が違う?~相続統一主義と相続分割主義~
ご家族が亡くなって相続が発生した、しかも、そのご家族が外国に住んでいた、相続財産が外国にあるなど、相続に外国が関わってくる場合には、その相続に関する法律問題を、どの国の法律で解決するかを決める必要があります。「どの国(地域)の法律で解決するか」を定めるルールのことを、「国際私法」と呼ぶことがありますが、この「国際私法」は、世界的に統一したものがあるわけではなく、各国が独自のルールを定めています。
そのため、相続問題をどの国の法律で解決するかについてのルールも、各国において異なるわけですが、大きな考え方の分かれ道として、「相続統一主義」と「相続分割主義」があります。
相続統一主義
相続統一主義とは、相続の対象財産が、動産であるか、不動産であるかによって、国際私法のルールを分けずに、被相続人に密接に関連する地の法を適用しようとする考え方です。日本もこの考え方を取っており、日本の国際私法では、相続問題については、広く、被相続人の本国(国籍がある国)法を適用することとしています(同じような考え方をとる国として、韓国、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、ポルトガル等)。これとは異なり、相続問題については、広く被相続人の住所地法を適用する国もあります(デンマーク、ノルウェー、多くの南アメリカ諸国)。
この考え方によれば、相続に関連する問題を、一つの国の法律で統一的に処理することが可能です。
相続分割主義
相続分割主義とは、相続の対象財産が動産であるか、不動産であるかによって、適用すべき法を区別し、動産の相続は被相続人の住所地法又は常居所地法(ルーマニア、北朝鮮等のごく少数の国では本国法。)を、不動産の相続は不動産所在地法を適用しようとする考え方です。この考え方は、イギリス、アメリカ等の英米法系の国や、中国、フランス、ベルギーなどで採られています。
この考え方によれば、不動産に関する相続の手続きが財産所在地法のもと行われることになるため、財産を確実に相続人に承継させることができます。
このような各国の考え方の対立によって、例えば、相続統一主義の国の法によってされた判断が、相続分割主義の国において効力を持つか等、法的に考慮が必要となる問題が生じることとなるのです。
今回は、国際相続にまつわる2つの対立する考え方をご紹介しました。
あなたが相続問題に直面したときには、関わる国が一体どの考え方を採用しているのか調べてみるとよいかもしれません。