国際相続における外国判決の承認

ある国の裁判所が下した判決、審判、決定などの判断は、その国の主権が及ぶ範囲内でのみ通用するのが原則です。したがって、他国で同様の判断を得るためには、国ごとに裁判を起こさなければなりませんが、同じ法律関係を巡って国ごとに異なる判断が下される可能性もゼロではありません。そこで、多くの国では、一定の要件を満たした場合、外国で下された判決にも自国の裁判所の判決と同様の拘束力を認めています。これを、「外国判決の承認」と言います。

相続の場面では、外国の裁判所による遺言の有効性の確認や、遺産管理人・遺言執行者の選任、遺産の分配の承認などの判決や決定が、日本でどのような効力を持つかという問題が、「外国判決の承認」の問題となります。

外国判決が承認される5つの要件

日本では、外国の判決は、次の5つの要件を満たす場合に、特別な手続なく自動的に日本で承認されます。なお、①は「判決」に限定していますが、外国の裁判所の確定した家事審判(これに準ずる公的機関の判断を含む。)についても、その性質に反しない限り、次の要件を満たせば同様に日本で承認されることとされています。

① 外国の裁判所の確定判決であること。
② 法令または条約によって、外国の裁判所の裁判権が認められていること。
③ 被告が、訴訟の開始に必要な送達を受けたか、受けなかったが応訴したこと。
④ 判決の内容及び訴訟手続が、日本において公序良俗に反しないこと。
⑤ 相互の保証があること。

このうち、特に問題になりやすいのが、③④⑤です。

送達(③)

被告が、訴訟の開始に必要な呼出しや命令の送達(公示送達その他のこれに類する送達を除く。)を受けたことは、もっとも重要な手続保証の1つとされています。そして、この送達が、条約の定める方法によるべきとされている場合に、これを遵守しない送達は、この要件を満たさないと解されています。

なお、外国の裁判所が日本に裁判文書の送達及び証拠調べを要請する方法については、外務省のホームページ(https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/cp/page25_001296.html)にも掲載されていますので、ご参照ください。

公序良俗(④)

外国の判決を承認し、これに基づいて執行する場合、判決の内容と訴訟手続の両方が日本の公序良俗に反しないことが必要とされています。ここでいう「公序良俗」違反とは、「我が国の法秩序の基本原則ないし基本理念と相いれない」ものとされています。

相互の保証(⑤)

「相互の保証」とは、日本の判決を上記5つの要件と同等の条件で承認し、執行する外国の判決のみを、日本でも承認し、執行することができるとするものです。この「相互の保証」の要件を満たさないがために、外国の判決が承認されない例もよくあります。

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