不当利得返還請求とは

不当利得とは

不当利得とは、法律上の正当な理由がなく利益を得て、本来その利益を得るはずだった人に損害を与えることをいいます。

相続では、ある相続人が他の相続人に無断で、被相続人の遺産を使い込んでしまうことが不当利得となります。具体的には、次のような場合です。

被相続人の現金を使い込む

被相続人が自宅に保管していた現金を他の相続人に無断で使い込んでいる場合があります。亡くなった後に使い込むだけでなく、生前から使い込んでいる場合もあります。

被相続人の預金を勝手に引き出す

被相続人名義の預金を他の相続人に無断で引き出している場合があります。亡くなった後だけではなく、生前から引き出していることもあります。

賃料を勝手に受取る

被相続人がマンションや駐車場など賃貸不動産を有していた場合、定期的に賃料収入が得られますが、その賃料を他の相続人に無断で受け取っている場合があります。

その他、被相続人が加入していた保険を勝手に解約して解約返戻金を受け取る、被相続人が保有していた株式を勝手に売却して売却益を受け取る等も該当します。

不当利得返還請求の方法

このように、特定の相続人によって遺産が使い込まれている場合は、不当利得返還請求によって取り戻すことができます。具体的には、次のような手続きを取ります。

事実関係を確認する

まずは冷静に、客観的な資料を集めて事実関係を確認しましょう。

預金の使い込みが疑われる場合は、被相続人名義の口座の取引履歴、定期預金の解約請求書、被相続人に関する医師の診断書やカルテなどを確認します。使い込みの疑いがある相続人名義の口座の取引履歴も確認可能であれば、より事実関係の確認に役立ちます。

被相続人の生活に必要な範囲を超えて高額な出金がある、その出金と同時期に使い込みの疑いがある相続人名義にその金額に近い入金がある、被相続人に関する医師の診断書やカルテ等により、被相続人の体調から預金の頻繁な出金は困難であるのにそれがある場合等は、使い込みが疑われる相続人に、事情を確認して話し合いましょう。贈与や売買等の反論がなされた場合は、契約書の提示を求めましょう。

合意書を作成する

話し合いで解決できれば、遺産分割協議書を作成します。返還される金額が大きく、分割払いになる場合は、不払いの危険性も考慮し、公正証書の作成を検討しましょう。

遺産分割調停の申し立てまたは不当利得返還請求訴訟の提起をする

話し合いで解決ができない場合は、裁判所を介した手続きで解決を図ることになります。

法改正により、令和元年7月1日以降に相続が発生し、相続発生後の使い込みが問題になっている場合は、家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立てることができます。

ただし、令和元年7月1日以降に発生した相続であっても、被相続人が亡くなる前の使い込みが問題になっている場合は、地方裁判所に不当利得返還訴訟を提起する必要があります。

不当利得返還請求の注意点

時効

不当利得返還請求には時効があります。時効についても法改正がなされ、令和2年4月1日からは、権利を行使できることを知ったとき(遺産の使い込みがあったことを知ったとき)から5年、または権利を行使できるとき(発覚の有無にかかわらず遺産の使い込みがあったとき)から10年のいずれか早いほうが時効となります。そのため、使い込みがあってから10年以上経過すると、不当利得返還請求はできなくなります。

ただし、使い込みがあったことと使い込みをした相続人を知ってから3年以内であれば、不法行為に基づく損害賠償請求で遺産を取り戻せる可能性があります。

金額の上限

不当利得返還請求で取り戻すことができる金額には上限があります。上限は、民法で定められた法定相続分です。

例えば、ある相続人が使い込んだ遺産が1000万円あったとしても、不当利得返還請求をする相続人の法定相続分が700万円であれば、取り戻せる金額は700万円が上限となります。

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