相続放棄が認められない事例
相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)の財産について、相続する権利を放棄することです。相続放棄をすると、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。
相続放棄の申述がなされると、家庭裁判所は、却下すべきことが明らかな場合以外は、相続放棄の申述を受理する運用を行っています(東京高裁平成22年8月10日)。
そのため、相続放棄の申述が受理されないことはまれですが、代表的事例は、次のとおりです。
①単純承認とみなされる場合(民法921条)
相続財産を使い込む、相続財産の解約や払い戻しをする、相続人間で遺産分割協議をする、相続財産の名義変更をする、電話や光熱費等の被相続人宛の請求書の支払をする等の行為は、相続人として相続財産を相続することが前提となる行為ですので、単純承認とみなされ、相続放棄が認められなくなります。
②申述期間が経過した場合(民法921条)
相続人が、相続開始があったことを知った時から3か月以内(熟慮期間といいます)に相続放棄の申述をしない場合は、単純承認をしたものとみなされます。
ただし、相続人は、相続放棄をする前に、財産の調査をすることができますので(民法915条第2項)、調査が難航していること等を理由に、相続放棄の期間延長の申立てをすることで、「3か月」という期間の延長が認められる可能性もあります。
単純承認とみなされないために、遺産の管理を適正に行い、熟慮期間内に手続きを行いましょう。