もし、遺産が「ペット」だったら・・・

最近では「ペットロス」などという言葉もあるように、ペットを家族以上に大事に思っている方も増えています。そういう人が、ほかに頼れるよりもなく、ペットと一緒に2人で(正確には1人と1匹)で暮らしている場合に、「私が死んだ後、この子の世話を誰にどう託せばいいのでしょうか」という悩みを抱える人も少なくありません。そのようなときに、信託の制度を使うことができます。ここでは、日本の昔話「花咲か爺さん」を例に、お話しましょう。

「花さか爺さん」では、正直じいさんが、飼い犬の「ポチ」の言うとおりに裏山に行き、「ここほれワンワン」といわれた場所を掘り、小判を見つける!というお話です。良いおこないをすれば良い結果が、悪いおこないには悪い結果が返ってくるという「勧善懲悪」の構成をした物語ではあります。実は話の中で、ポチは隣の強欲爺さんに殺されてしまうのですが、仮にポチが生きていて、正直じいさんよりも長生きしていた場合を、相続の問題で考えて見ましょう。

正直じいさんは、我が子のように可愛がってきた愛犬ポチの面倒を見てくれる人がいるかどうか、どのようにすればポチは天寿を全うできるか、心配でしょうがないことでしょう。まず、従来は友人やご近所さんなど、誰か信頼できる人にお願いしてはどうか、というものです。しかし、仮におじいさんが元気なうちに、遠く離れてほとんど顔も見せない息子にポチの世話をお願いしておいたとしても、息子さんが本当にちゃんとポチの世話をすることができるかどうかは分かりません。では、おじいさんが遺言書を書いて、息子に十分なお金を遺してやる代わりに、ポチの面倒をちゃんと見るようお願いしてはどうか、と考えます。しかし、これでもまだ、おじいさんとしては不安が残ります。息子さんがお金だけを着服し、ポチの面倒を大してしないかもしれないからです。特にペットの世話は、そのペットに愛情を持っている人、過去にペットを飼ったことのある人でなければ、いざ飼おうと思っても上手くいくとは限りません。そこで、「信託」制度を利用するのです。おじいさんは、元気なうちに、息子さんと次のような信託契約を結びます。まず、おじいさんは、息子さんに対し、

  1. ポチが天寿を全うするまで、お金をきちんと管理すること
  2. ポチの飼育を信頼できる団体等に委ねる。(飼育状況の管理や飼育費用の支払い)
  3. 管理しているお金の中からポチの飼育費用を支払うこと

を委託します。そして、ポチが亡くなってしまったら、残ったお金を息子さんが受け取れる、という仕組みにするのです。

この仕組みの最大のポイントは、「お金の管理」と「ポチの世話」を分離するところにあります。おじいさんは、遠く離れた息子さんが「本当にポチの世話をするか?」が心配なため、ポチについては、大切にしてくれる人に任せた方が安心です。しかし、その人にお金をゆだねるにも心配が残ります。そこで、お金は息子さんに委ねて管理をお願いするとともに、ポチが元気なうちはそのお金を使い込まないよう信託契約をします。一方、ポチが亡くなった場合には残った財産が息子さんのものになります。息子さんにとっては、ポチの世話、お金の管理をきちんとすることで、遺産を手にすることができるので、モチベーションが生まれます。

しかし、ペットに限らず、信託の際に必ず指摘されるのが、ポチの飼育をお願いできる「信頼できる団体等」がなかなか見つからないという点です。ポチの場合は動物愛護団体など、本当に信頼できる団体なのかなど、「信託」制度を利用する際には必ず向き合わなければならない問題です。「この人に任せておけば大丈夫!」と思える人がいてくれて初めて、「信託」という制度の効果があるともいえるのです

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