地主・不動産経営者の相続・遺産分割を円満に解決するために知っておきたいこと
地主の方や不動産経営をされていた方の相続は、その財産の特性上、現金や預貯金のみの相続に比べて複雑になりがちです。「何から手を付ければいいのだろう」「家族で揉めてしまったらどうしよう」といった不安を抱えていらっしゃる方も少なくないのではないでしょうか。
そこで、皆様が少しでも冷静に次のステップを考えられるよう、この記事において不動産の相続に関する基本的な知識を提供することで、必要に応じて専門家である弁護士への相談をスムーズに行うための参考にしていただければと思います。
地主・不動産経営者の相続において生じる問題点
不動産は、私たちの生活や事業の基盤となる大切な資産ですが、相続においては特有の難しさがあります。ここでは、地主の方や不動産経営者の方の相続で特に起こりやすい問題点をご紹介します。
1. 不動産の評価が難しい
相続財産としての不動産の価値をどう評価するかは、遺産分割協議の大きな論点の一つです。不動産の評価方法には、主に以下のものがあります。
●相続税評価額: 相続税や贈与税の計算に使われる不動産の評価額。
●固定資産税評価額: 固定資産税の計算に使われる不動産の評価額。
●実勢価格(時価): 実際に市場で取引されると見込まれる価格。
これらの評価額はそれぞれ異なるため、どの評価額を基準にするかで相続人間の公平感が変わってくることがあります。裁判で争いがある場合には、時価で評価するのが原則ですが、時価評価を行うにしても、収益性のある賃貸物件などについては、想定される取引価格をどのように算定するかも難しく、話し合いが難航する可能性が高いです。
2. 分割しにくい(共有のリスク)
不動産は、現金のように物理的にきれいに分けるのが難しい財産の代表例です。複数の相続人で分ける場合、以下のような方法が考えられます。
●代償分割: 特定の相続人が不動産を取得し、他の相続人には代償金(現金)を支払う方法。
●換価分割: 不動産を売却して現金化し、その現金を相続人間で分ける方法。
●共有名義: 不動産を相続人全員の共有名義にする方法。
しかし、共有名義は将来的なトラブルの種になりやすいため、注意が必要です。例えば、共有者の一人が売却したいと考えても他の共有者の同意がなければ売却できませんし、共有者が亡くなるとさらにその相続人に権利が分散し、関係者が増えて複雑化するリスクがあります。話し合いで解決できないときには、共有物分割請求という法的手続はありますが、時間も労力も余計に掛かる可能性が高いです。
3. 納税資金の確保が困難
不動産は高額な資産であることが多いため、相続税も高額になる傾向があります。しかし、不動産そのものはすぐに現金化できるわけではないため、「評価額は高いけれど、手元に現預金がない」という状況に陥ることがあります。納税のために、大切な不動産を急いで売却せざるを得なくなるケースも少なくありません。
4. 遺留分侵害の問題
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者、子、直系尊属)に法律上保障されている最低限の遺産の取り分のことです(民法1042条等)。例えば、遺言書で「長男に全ての不動産を相続させる」と書かれていたとしても、他の相続人は遺留分を請求する権利(遺留分侵害額請求権)を持っています。
不動産が相続財産の大部分を占める場合、特定の相続人に不動産を集中させると、他の相続人の遺留分を侵害してしまう可能性があります。これにより、相続人間で争いが生じることがあります。
5. 賃貸物件の管理・経営の引き継ぎ
賃貸アパートや駐車場などを経営されていた場合、その管理・経営を誰がどのように引き継ぐのかも大きな問題です。また、入居者との契約関係、物件の維持管理など、専門的な知識や経験が必要となる場面も多く、相続人間でスムーズに合意形成ができないことがあります。
弁護士に相談すべき具体的ケースとそのタイミング
「こんなことで弁護士に相談してもいいのだろうか…」とためらわれる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、相続問題は専門的な知識が不可欠であり、早期の相談が円満解決への近道となることも少なくありません。
弁護士に相談するメリット
弁護士に相談することで、以下のようなメリットが期待できます。
●法的な専門知識に基づく適切なアドバイス:
相続に関する法律や判例は複雑です。弁護士は、個別の状況に合わせて、法的にどのような選択肢があり、それぞれどのようなメリット・デメリットがあるのかを具体的にアドバイスできます。
●相続人間の交渉代理:
感情的になりがちな相続人間の話し合いも、弁護士が間に入ることで冷静に進められることがあります。皆様の代理人として、法的な根拠に基づき、相手方と交渉を行います。
●遺産分割協議書などの書類作成:
遺産分割協議がまとまった場合、その内容を法的に有効な形で「遺産分割協議書」として残す必要があります。弁護士は、将来的な紛争を防ぐための適切な書類作成をサポートします。
●紛争の予防・早期解決:
問題がこじれる前に相談することで、紛争を未然に防いだり、深刻化する前に早期解決を図ったりすることが可能です。
●精神的な安心感:
相続手続きの煩雑さや将来への不安は、大きな精神的負担となります。専門家である弁護士が伴走することで、安心して手続きを進めることができます。
具体的なケース
以下のような状況に当てはまる場合は、弁護士への相談を検討することをおすすめします。
●相続人同士で意見が対立している、または対立しそう。
(例:不動産の評価方法で揉めている、誰が不動産を相続するかで意見が割れている)
●遺言書の内容に納得がいかない、または遺言書が見つからない。
(例:特定の相続人に有利すぎる遺言、遺言の有効性に疑問がある)
●不動産の分け方(代償分割、換価分割など)で合意できない。
●遺留分を請求したい、または他の相続人から遺留分を請求されている。
●相続人が多数いる、または疎遠な相続人がいて連絡が取りにくい。
●賃貸物件の管理や家賃収入の分配について話し合いがまとまらない。
●相続手続きが複雑で、自分たちだけでは進め方がわからない。
相談のタイミング
相続に関するご相談は、問題が深刻化する前、できるだけ早い段階で行うことが望ましいです。
●理想は、相続が発生する前(生前対策のご相談):
将来の相続争いを防ぐための遺言書作成、生前贈与、家族信託など、生前の対策についてご相談いただくのが最も効果的です。
●相続発生後、できるだけ早い時期:
遺産分割協議を始める前や、相続人間で少しでも意見の食い違いが見られた時点でご相談いただければ、スムーズな解決につながりやすくなります。
●遺産分割協議が難航していると感じたとき:
当事者間での話し合いが行き詰まってしまった場合でも、弁護士が介入することで新たな解決の糸口が見つかることがあります。
相続税の申告が必要な場合には、相続税申告手続の対応について税理士への相談・依頼も検討する必要がありますので、申告期限(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)なども考慮し、余裕をもってご相談ください。
弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所の強み
私たち弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所は、これまで多くの相続問題、特に不動産が絡む複雑な案件に携わってまいりました。
●不動産相続に関する経験と実績:
これまでに、不動産の評価や売却・分割が問題となる相続案件の相談・案件処理を多く取り扱っており、それにより培われた経験・ノウハウを活かして、皆様の状況に即した最適な解決策を模索します。
●個々の状況に合わせた検討・対応:
一口に不動産相続といっても、ご家族構成、財産の内容、皆様のお気持ちは様々です。私たちは、お一人お一人のご事情を丁寧にお伺いし、画一的ではない、きめ細やかなサポートを心がけています。
●親身なヒアリングと丁寧な説明:
法律問題は専門用語が多く、分かりにくいと感じられるかもしれません。私たちは、できる限り平易な言葉で、ご納得いただけるまで丁寧に説明し、皆様の不安に寄り添います。
●他士業との連携:
相続手続には、税理士(相続税申告)、司法書士(不動産登記)など、他の専門家の力が必要となる場面も多くあります。当事務所は、必要に応じて信頼できる他士業と連携しながら相続の紛争・手続全体の解決に向けたサポートをします。
●初回相談のしやすさ:
「まずは話を聞いてみたい」という方のために、お気軽にご相談いただける体制を整えております。安心して最初の一歩を踏み出してください。
ご相談から解決までの流れと費用(一般的な説明)
実際に弁護士にご相談いただく場合の流れと、費用に関する一般的なご説明をいたします。
ご相談の流れ
1.お問い合わせ・ご予約:
まずはお電話または当事務所ウェブサイトのお問い合わせフォームから、ご相談希望の旨をご連絡ください。ご相談日時を調整させていただきます。
2.初回ご相談(1時間程度を目安):
弁護士が直接お話を伺います。ご家族関係、相続財産の内容、現在お困りのこと、ご希望などを詳しくお聞かせください。その上で、法的な問題点、今後の見通し、取り得る解決策、弁護士にご依頼いただいた場合の進め方などをご説明します。
ご持参いただきたいもの(あればで結構です):
✓ 戸籍謄本(被相続人、相続人のもの)
✓ 不動産の登記簿謄本、固定資産税評価証明書
✓ 遺言書
✓ その他、相続財産に関する資料(預金通帳、有価証券の明細など)
✓ これまでの経緯をまとめたメモなど
3.ご依頼(委任契約):
ご相談の結果、当事務所にご依頼いただくことになりましたら、委任契約を締結いたします。契約内容や弁護士費用については、事前に明確にご説明いたしますのでご安心ください。
4.調査・交渉・法的手続の代行:
ご依頼に基づき、弁護士が相続財産の調査、他の相続人との交渉、遺産分割協議書の作成、必要に応じて遺産分割調停・審判の申立てなど、法的な手続きを進めます。進捗状況は適宜ご報告いたします。
5.解決:
遺産分割協議の成立、調停成立、審判確定などにより、問題が解決となります。
弁護士費用について
弁護士費用は、ご依頼いただく内容や事案の複雑さによって異なります。一般的には、以下の費用が発生します。
●法律相談料: 弁護士に法律相談をする際に発生する費用です。当事務所では、初回のご相談は一定時間無料とさせていただく場合や、有料の場合でも事前に料金をお伝えしております。
●着手金: 弁護士にご依頼いただく際に、事件処理の対価としてお支払いいただく費用です。事件の結果に関わらず発生します。
●報酬金: 事件が解決した際に、その成功の度合い(経済的利益など)に応じてお支払いいただく費用です。
●実費: 事件処理のために実際にかかる費用です(例:収入印紙代、郵便切手代、戸籍謄本等取得費用、交通費、不動産鑑定費用など)。
費用については、ご相談時に事案の内容を詳しくお伺いした上で、必ず事前に明確にご説明し、ご納得いただいた上でご契約いただきます。 不明な点があれば、遠慮なくご質問ください。
まとめ:円満な不動産相続のために
地主の方や不動産経営者の方の相続は、財産の評価、分割方法、納税資金の確保、事業承継など、多くの課題を伴います。これらの問題を放置してしまうと、相続人間での争いに発展したり、大切な財産を守れなくなったりする可能性もあります。
最も大切なことは、なされるがままにせず、早い段階で専門家である弁護士に相談することです。
弁護士は、法律の専門家として皆様をサポートし、複雑な相続問題を円満に解決するためのお手伝いをいたします。それは、皆様の大切な財産を守るだけでなく、ご家族の絆を守ることにも繋がると信じています。
相続は、誰にでも起こりうることです。そして、それは決して他人事ではありません。もし、少しでも相続に関してご不安なこと、お困りのことがございましたら、どうぞお気軽に弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所にご相談ください。私たちが、皆様の不安を和らげ、より良い未来への一歩を踏み出すためのお力になれれば幸いです。
経験豊富な弁護士が、親身になってご対応いたしますので、まずはお気軽にお問い合わせいただき、皆様のお話をお聞かせください。