生前贈与を受けても相続放棄は可能?
生前贈与を受けている場合に、相続放棄は可能なのでしょうか?
生前に財産を受け取っているのに、相続を放棄するなんて、なんだか都合がよすぎる気がする・・・なんて不安に思う方もいらっしゃるかもしれません。
結論からお伝えすると、生前贈与を受けていても相続放棄は可能です。
生前贈与と相続放棄は全く別の制度ですので、生前贈与をしたから相続放棄ができないという関係性にはありません。
ただし、いくつか注意点がありますので、ご説明します。
生前贈与の注意点
まず、生前贈与について、債権者から詐害行為取消権を行使される可能性があります。
民法424条1項は、「債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。」として詐害行為取消権を定めています。
もちろん生前贈与の時期や内容にもよりますが、相続放棄を検討するということは、被相続人は債務超過に陥っていたと考えられ、そのような状況下で行われた生前贈与は、本来被相続人にお金を貸した債権者に返すべきものを親族に贈与してしまった、つまり「債権者を害することを知ってした行為」(詐害行為)に該当する可能性が高いと考えられます。
その場合、被相続人の親族が、債務超過の事実を知っていれば、債権者から詐害行為取消権を行使されることによって、生前贈与が取り消される恐れがあります。
相続税がかかる場合
また、生前贈与を受けている場合には、相続放棄をしたとしても相続税がかかる場合があります。
生命保険金を受け取ったなどの一定の場合を除き、通常、相続放棄をした場合には相続税は発生しないのですが、以下の場合には、相続放棄をしても相続税が発生する可能性があります。
相続開始3年以内(令和6年1月1日以降は7年以内)に生前贈与が行われた場合
この場合、相続開始3年以内に贈与された財産と他の相続人が受け取った遺産の合計額が、相続税の基礎控除額を超えている場合には、金額に応じて相続税を支払う必要があります。
生前贈与について相続時精算課税制度の適用を受けていた場合
相続時精算課税制度とは、贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額から相続税を計算して納税する方法で、この制度を選択すると、2500万円までは贈与税を納めずに贈与を受け取ることが可能になります。
生前贈与を受けた際にこの制度の適用を受けている場合には、自らが贈与を受けた財産の贈与時の価額と他の相続人が受け取った遺産の合計額が、相続税の基礎控除額を超えている場合には、金額に応じて相続税を支払う必要があります。