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2024.02.29投稿 円満な遺産分割の進め方と遺産の分け方で争わないための方法

円満な遺産分割の進め方

(1)遺言書を探す

【ア】最初に、亡くなった人が遺言書を残しているかどうかを確認しましょう。遺言書があれば、原則、遺言書のとおりに遺産を分割します。遺言書に分け方が記載された遺産は、遺産分割協議の対象から除外されます。

遺言書の有無は、亡くなった人の遺品を探したり、公証役場の遺言検索も利用したりして、調べてみましょう。

【イ】遺言書の有無が判明し、遺産分割をすべきかどうか、どの財産が遺産分割の対象となるかを把握できたら、次は、亡くなった人の遺産の分け方を話し合う必要があります。これを、「遺産分割協議」といいます。

(2)相続人を調査・把握する

【ア】前提として、遺産分割協議には、相続人全員の参加が必須であることに注意が必要です。「相続人全員」と言っても、相続人が誰かはケースによって異なります。

例えば、亡くなった人の配偶者や子は、常に相続人となります。

その一方で、亡くなった人の子が先に死亡していたり、相続欠格、相続廃除によって相続権を失った場合には、その子(亡くなった人の孫)が相続人となります。孫も相続権を失っている場合は、亡くなった人のひ孫が相続人となります。また、子や孫等の相続人がいない場合、亡くなった人の直系尊属(父母や祖父母など)が相続人となります。子や孫等、直系尊属もいない場合、亡くなった人の兄弟姉妹が相続人となります。

亡くなった人の兄弟姉妹もおらず、あるいは相続欠格、相続廃除によって相続権を失った場合には、その子(亡くなった人の甥や姪)が相続人となります。なお、甥や姪もいない場合は、その子が相続人になることは認められていません。

【イ】相続人が誰かについては、亡くなった人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本などの資料を辿って確認します。

(3)相続財産を調査・把握する

次に、亡くなった人の相続財産を調査し、把握します。現預金や株式、不動産などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含めて、漏れがないように調査する必要があります。亡くなった人の遺品から通帳や郵便物などの手がかりを探したり、金融機関に相続人であることの証明を提出して調べてもらうこともできます。

(4)遺産分割協議をする

【ア】相続人と相続財産を把握できたら、相続人全員で、遺産をどう分けるかについて話し合います。遺産の分け方としては、主に以下の4つの方法があります。

① 現物分割
遺産を物理的に分ける方法です。例えば、現金や預貯金を相続割合で分けたり、土地を分筆してから分けたりする場合が当てはまります。

② 代償分割
遺産を一部の相続人だけが相続し、その代わりに、他の相続人に対して代償金を支払う方法です。不動産や株式など、現物分割がしづらい財産で用いられることが多いです。

③ 換価分割
遺産を売却して、その代金を相続人間で分ける方法です。不動産や株式など、現物分割がしづらく、かつ、相続人に代償金を支払う資力がない場合に用いられることが多いです。

④ 共有分割
遺産を複数の相続人で共有する方法です。不動産で用いられることが多いです。

【イ】遺産の分け方について合意ができたら、その内容を遺産分割協議書としてまとめ、書面に残します。

(5)各相続財産の名義を変更する

遺産分割協議書が完成したら、その内容に従って各相続財産の名義を変更します。不動産は相続登記、自動車は登録、預貯金は名義変更や解約、株式は株主名簿の書換や証券口座の解約等の手続が必要です。

これらが全て完了したら、遺産分割協議は終了となります。

遺産の分け方で争わないための方法

(1)遺産分割協議が決裂したら…

遺産分割協議が決裂した場合、家庭裁判所の調停や審判によって遺産分割の方法を決める必要があります。

【ア】遺産分割調停
第三者である調停委員が間に入って、相続人全員が遺産の分け方を話し合う手続です。裁判官と調停委員で構成する調停委員会が調停委員会案を提示したりして、相続人全員が同意するに至れば、調停が成立し、調停調書が作成されます。

【イ】遺産分割審判
遺産分割調停が不成立となれば、家庭裁判所が審判を下し、各相続人に審判書が送達されます。家庭裁判所は、各相続人の法定相続分を基準としつつ、当事者から提出された主張や資料を総合的に判断して遺産分割の方法を決定します。

(2)遺産の分け方で争わないために

遺産分割は、決裂すればそれだけ手続に時間も手間も要し、トラブルに発展するリスクも潜んでいます。したがって、遺産の分け方で争いにならないよう、事前に対策をしておくことが重要です。

ア【対策1】遺言書を作成する

遺言書を作成しておけば、相続が発生しても、遺言者の意思に従って遺産を分けることになり、遺産分割協議は不要となります。その結果、遺産分割協議で相続人が対立するトラブルを回避することができます。

特に遺言書では、遺言者が遺産の分割方法を指定したり、法定相続分に優先した割合で分割したり、相続人以外の人や団体に遺贈したりすることもできます。また、「付言事項」として、自分の気持ちや各相続人への感謝の気持ちを記すこともできます。ただし、各相続人の最低限の相続分として保障されている遺留分を侵害しないよう注意しましょう。

また、自分で作成する「自筆証書遺言」でも構いませんが、遺言書の形式や内容について将来争いになることを防ぐには、「公正証書遺言」で作成しておくことをお勧めします。

イ【対策2】生命保険や信託で遺産分割の対象外の財産を指定する

生命保険の死亡保険金は、受取人を指定することで受取人固有の財産となり、遺産分割の対象から外れます。また、家族信託や教育贈与信託などの信託制度を利用することで、信託財産も遺産分割の対象から外すことが可能となります(ただし、遺留分の対象にはなるので、注意が必要です。)。

ウ【対策3】資産の組み換えを行う

遺産の分け方で争いになる原因の1つに、不動産や株式のように分割しづらい遺産ばかりが存在し、分けづらいということがあります。その結果、不動産や株式が共有状態になり、単独で建替や売却ができず、共有者間で紛争になるケースが多々見られます。そのため、相続が発生する前から資産を組み換え、換価するなどして、将来分けやすい現預金にしておくことも重要です。

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