以前作成した遺言の内容を変更・撤回したい場合の対処法
遺言を作ったはいいものの…
自分の死後に備えて、またはどなたかからお願いされて、遺言を作成したものの、その後の状況の変化や気持ち・考えが変わったことから、一度作成した遺言を変更したいと思うことは、よくあることだと思います。そのようなときに、遺言の内容を変更することはできるのでしょうか?
これについては、民法第1022条において、「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。」と規定されています。そのため、作成した遺言を撤回して、新たに作成することで、内容を変更することができます。
遺言を作るには
民法第967条において、「遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。ただし、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない。」と規定されています。なお、特別の方式というのは、病気などで亡くなる危険が迫っている場合や、伝染病で隔離されている場合等に遺言を作成するような本当に限られた場面での方式を指します。
そして、日常の中で作成する場合には、自筆証書遺言又は公正証書遺言にて作成することが一般的です。もっとも、自筆証書遺言は、自分で作成できる一方で、有効に成立させるために守らねばならないルールが多いため、せっかく作成するのであれば、公正証書遺言にしておくことをお勧めします。
公正証書遺言を作成するには、遺言の案文を自分で考えて作り、公証役場に連絡をして作成予約を取る必要がありますが、遺言の案文を作成するにあたっては、検討すべき事項が多くあります。
例えば、とある相続人に多く渡したいと思ったときに、その人は他の相続人から遺留分侵害額請求を受けてしまうおそれが生じる…といったこともありえます。そういったトラブルを防ぐためには、遺言で渡すものの分量を調整したり、遺言執行者を指定しておいたりするなどして、可能な限り残される相続人間の直接のトラブルが生じないように配慮すること等を検討することもできますので、公証役場に予約を入れる前に、一度弁護士に相談して、トラブル防止のアイディアを仰いでみると良いかと思います。
遺言が複数出てきたら
遺言を作り直したが、元の遺言を破棄し損ねていた場合などに、2通以上の遺言が存在する状況になってしまうかと思います。
そのようなときは、日付の新しい方が有効になります(民法1023条)。
もっとも、残された相続人からすると、そもそも遺言が複数存在することを想定していないかもしれません。そうなりますと、古い遺言に基づいて遺産を引き継ぐ手続きを進めてしまう…ということが生じかねません。
この点、公正証書遺言にしておくと、全国どの公証役場で作成しても、とある公証役場で遺言を検索するシステムを利用すれば、相続人が遺言を探すことができますので、そういったトラブルも防ぐことができます。
最後に
人生いつ何が起きるかわからない…死亡時に遺言がなかったために、相続開始後に長年にわたる遺産分割問題に発展しまうというケースはたくさん存在します。
後から状況に応じて変更できるということも加味しますと、相続人が複数いらしたり、相続人以外の人(内縁のパートナー等を含む)に遺産を渡したいと思っていたりする場合には、ひとまず現状を踏まえた遺言を作っておくことを強くおすすめいたします。