Columnコラム

エンディングノートと遺言の違い

昨今の「終活」準備の一環として話題にあがることが多い「エンディングノート」。

書店や文房具取り扱い店ではさまざまなタイプのエンディングノートが販売されているほか、自治体によっては無料で配布している場所もあるようです。

ただ、「エンディングノートを書いたから、相続対策はOK」などと思ってはいませんか? ここでは遺言とエンディングノートの違いについて、法的な観点から解説します。

 

最も大きな違いは、法的な効力があるかないか。

エンディングノートも遺言も、自身が死亡した後の方針や希望について、遺された人に伝えるための文書、という役割は共通しています。

ただ、両者の最も大きな違いとして、法的効力の有無が挙げられます。すなわち、遺言には法的効力があり、遺言書に書いた意思表示の内容は、自身の死後も法的効力があるものとして実行してもらうことができます。これに対し、エンディングノートは、あくまでも自身の希望などを伝えるにとどまり、その内容どおりに実行してもらえるとは限らない、ということになります。

その他の遺言書とエンディングノートの大きな違い

 

1 書く内容

エンディングノートに書く内容については特に制限はなく、自由に書きたいことを書くことができます。自身のプロフィールや家族、友人等へのメッセージ、遺品整理の方法、葬儀やお墓の希望、遺影の指定等の他、、終末期の介護や延命治療など、生前のことについて書くこともできます。

これに対し、遺言書に記載し、法的効力を持たせることができるのは、死後の遺産の分け方等、一定の身分上の事項に限定されています。したがって、遺言書に生前の財産管理や介護についての希望を書いても、法的効力は生じません。ただ、法的効力は生じないものの、家族へのメッセージや葬儀の希望等、本人が大切に思うことを遺言書に書いておくことは可能です(これを「付言事項」といいます。)。

 

2 書き方

エンディングノートの書き方や形式に決まりはありません。市販のエンディングノートを利用したり、パソコンを使って作成することもできます。

これに対し、遺言書は、法律上決められた要件と形式に従って作成しなければなりません。決められた要件と方式を満たしていない場合、遺言書としては無効になってしまうこともあるので、注意が必要です。

 

3 内容を確認するタイミング

エンディングノートは、その内容を確認(開封)する時期や手続について、特に決まりはありません。生前にその内容を開示し、周囲の人たちと共有することも可能です。

これに対し、遺言書は、遺言者以外の人が開封できるのは、遺言者の死後であり、裁判所での確認(これを「検認」といいます。)を要する場合がある等、開封時の手続も決まっています。遺言書を見つけても、勝手に開封すると過料が科されることもありますので、注意が必要です。

 

4 作成にかかる費用

エンディングノートの作成に費用はあまりかかりません。作成に際し、市町村や葬儀社が無料で配布しているエンディングノートを利用することもできますし、市販品を購入したとしても数百円から数千円程度でしょう。

これに対し、遺言書はその形式(自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言)により、必要な費用も異なります。費用が最も高額なのは、公正証書遺言で少なくとも数万円程度はかかります。ただ、公証人という法律の専門家が関与して作成し、遺言書として確実に法的効力を備えることができるので、安心です。

 

目的に応じて、使い分けましょう

 

エンディングノートと遺言書は、その違いを正しく理解し、目的や状況に応じて上手に使い分けるのがよいでしょう。

なお、生前の介護や死後の葬儀の希望等、エンディングノート、遺言書のいずれに記載しても法的効力を持たせることができない事柄を確実に実行してもらうためには、別途任意後見契約、財産管理委任契約、死後事務委任契約等を検討してもよいでしょう。

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